第36話 温もりのゆで卵

ある寒い冬の日、恵美とその母・美咲は地元の銭湯で温まることにした。二人はこの日をとても楽しみにしていて、一緒に湯船に浸かりながら日頃の疲れを癒す時間を過ごしました。


銭湯からの帰り道、美咲は恵美を近くの小さな食堂に連れて行った。この食堂は地元で有名な場所で、特にその新鮮なゆで卵が人気でした。「寒い日には熱々のゆで卵が体を温めてくれるわよ」と美咲が言いながら、二人はカウンター席に座りました。


店内は温かく、他の客も寒さをしのぐために来ているようで、和やかな雰囲気が流れていました。店主が笑顔でゆで卵を二つ持ってきてくれると、恵美は早速ひとつを手に取った。卵は外側から湯気が立ち上り、手に心地よい温もりを感じさせました。


「いただきます」と言って、恵美はゆで卵の殻を剥き始めた。熱々の卵黄が顔を覗かせると、恵美はその温かさにほっと一息ついた。母と娘は温かいお茶を飲みながら、ゆで卵を味わいました。


美咲は恵美に子供の頃に祖母と一緒に銭湯に行った思い出話をした。その時も、銭湯の後には必ずゆで卵を食べたと言って、笑いながら昔の話を楽しんでいました。恵美はその話を聞きながら、家族の絆の大切さと、小さな習慣がどれほど心に温もりを与えるかを感じました。


その日の夜、恵美は日記にこの温かい経験を記録した。「今日のゆで卵はただの卵ではなく、家族の愛と温もりを感じさせてくれた。母との時間がこんなにも心温まるものだと改めて知り、とても幸せ」と書き留めました。


この小さな冒険は、恵美にとってただの銭湯帰りのひとときではなく、家族の大切な思い出となり、食べ物が持つ心温まる力を再認識する機会となった。





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