第18話 心の窓を開く日

春の柔らかな日差しが窓を通して室内に射し込む中、恵美は母・美咲と一緒に心療内科の待合室に座っていた。今日は恵美にとって大切な日で、初めての心療内科受診日だった。学校に通わず在宅学習をしている恵美は、最近不安や孤独感を感じることが増え、それをどうにかしたいと願っていた。


「大丈夫だよ、先生はきっと優しいからね」と美咲が励ましの言葉をかけると、恵美は小さく頷いた。名前が呼ばれると、恵美は美咲と一緒に診察室へと歩いて行った。診察室には穏やかな表情の先生が待っていて、恵美を優しく迎え入れた。


診察が始まると、美咲は「恵美が先生とゆっくり話せるように」と言って部屋を出て行った。初めての診察で少し緊張していた恵美だが、先生の温かい雰囲気に少しずつ心を開き始めた。


「恵美さん、最近どんなことを感じていますか?」と先生が優しく尋ねると、恵美は自分の感じている不安や孤独、学ぶことへのプレッシャーについて話し始めた。恵美はまた、在宅学習をしていることで友達ができない寂しさや、将来への不安も打ち明けた。


先生はじっくりと恵美の話を聞き、時々質問を投げかけながら、恵美が抱える感情の背後にある思いを探っていった。診察の途中で、先生は恵美に深呼吸の練習やリラクゼーションの技術を教え、不安を和らげる方法についてアドバイスした。


診察の最後に、先生は「恵美さんが感じていることはとても大切です。一緒に少しずつ解決の糸口を見つけましょうね」と励まし、次回のアポイントメントを設定した。


美咲が迎えに戻ってくると、恵美は少しホッとした表情で「ママ、先生がすごく優しくて、話しやすかったよ」と話した。家に帰る道すがら、恵美は心が少し軽くなったように感じ、美咲と手を繋ぎながらこれからのことに少し希望を持てるようになった。


その夜、恵美は日記にこの日のことを詳しく書き留め、「先生と話して、心の重さが少し軽くなった気がする。これからも先生のアドバイスを大切にして、不安に立ち向かっていきたい」と綴った。この日の受診は、恵美にとって新しい一歩であり、心の健康を大切にすることの重要さを改めて認識する機会となった。

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