第十二話 “戦場を間違えたな”
「――厄介だな」
アドルは雲の上、天空から地上より伸びる矢を見て言う。
このまま高度を上げ続けていてもいずれ限界は来る。ならば、とアドルは一転、地上へ向けて急降下した。
そのまま風の槍、剛鉄の槍、加えて炎のブレスを発射する。
風&鉄&炎vs光の矢。弾幕対決。都市が幾多も壊滅する衝撃が空中で発生した。
真下の光の矢にのみ集中砲火し、突破する。
残った矢はアドルの速度について行けず、弧を描いて追跡してくるが、アドルが〈レフ火山〉の火口に身を隠すと対象を見失って明後日の方向へ消えて行った。
村よりかなり離れた〈レフ火山〉の火口に着地、しかし息つく間も無く光の矢に乗ったサーウルスが緑色の剣……ヴァンスを殺した竜殺しの剣を持ってアドルに斬りかかる。アドルは白銀の剣を作成し、天から振り下ろされた剣を受けた。
「手合いの続きと行こうか!」
「上等だッ!!!」
アドルは左手にも白銀の剣を装備し、二刀流でサーウルスに襲い掛かる。
「なぜ私を殺す? もう守るべき物はなにもないだろうにっ!」
「なにもないからこそ、オレは自分の感情に身を委ねられるんだ……!」
「持たざる者の強さだな……果たしてその牙、私に届くか!」
炸裂する剣戟、サーウルスはアドルの剣の重みに押され、一歩後ろへ退いた。
好機と見て追撃するアドルだったが、その剣先を左手の盾に上から叩き折られ、そのまま盾に突き飛ばされた。
「ちっ!」
態勢を崩されたアドルは体をスライムに変化。サーウルスは踏み込み、
「〈
〈
スライムに変化したはずのアドルの左肩からは真っ赤な鮮血が溢れ出る。斬り落とされた左腕は腐って塵となって消滅した。
「〈
サーウルスは剣を振り、剣に付いた血を散らす。
そのままサーウルスは粘弾液魔(スライム)殺しの剣を撫でた。
「……懐かしいな。私がはじめて〈
「娘……誕生日……」
ルースの父親が失踪したのはルースの五歳の誕生日の日だった。
あの日、ルースのために彼は王都まで行き、そしてサーウルスに捕えられ、拷問の末に殺害された。
アドルはルースの父親の失踪、その真実の一部が明らかになり激しい怒りを頭に上らせた。腹の底……腹の底に居る誰かの怒りも混ざっている。
「嗤える話だろう?
魔物風情が誕生日を祝うなどと」
傷口からスライムを滲みだし腕の形をさせ、スライムを剛鉄でコーティングして白銀の左腕を作り出す。
「クソ野郎が……!」
「なにか、気に障ることでもあったかな?」
「いいや別に。お前を殺す理由が一つ増えただけだ」
アドルは右手を前に出し、サーウルスと戦う前に火口に
サーウルスはその緑の宝珠が埋め込まれた武器を見て固唾を飲む。
その杖は最も信頼できる部下へ、サーウルス自ら捧げた物だった。
「――〈
「戦場を間違えたな。
サーウルス……」
アドルは火口の入り口・出口を剛鉄で全て埋める。
「ここなら逃げ場はない。
終わりにしよう、サーウルス……」
「誘ったのか!
はじめからここで決着をつけるつもりで!」
「この火山のマグマを火元にする。
……油を霧状に散布、鉄粉で熱を連動させ、一気に業炎を拡散させる。
爆発の瞬間に入り口を解放し、風の力で外の大気を引っ張り込む」
「よせ、やめろ! お前もただでは済まない――」
アドルはその全身の表面を竜の鱗で覆う。
「火竜の鱗か……!」
火竜の鱗は絶対的な火耐性を持っている。
それだけじゃない。風の鎧によって爆風も防ぐ。瓦礫はスライムの体で流し、他の属性の余波は剛鉄で全て防ぐ。もはやアドルの耐性に隙は無い。
――“絶対耐性”
「お前の手持ちでコレを防げるか、サーウルス」
サーウルスは懐から札を取り出し、そこら中にばらまいた。
同時に、アドルフォスは杖を振り下ろす。
「――オレは防げるぜ」
火山エネルギーに加え、鉄粉+風力+油、これらをアドルフォスが持つ無数の魔力で形成する。
アドルフォスの内にある四人の総魔力はそこらの魔術師の約一万人分に相当する。
底なしの魔力によって最効率で作り出された爆発はサーウルスの想定を遥かに上回った。
――火山一帯を全て吹き飛ばす爆発が天を揺らした。
――――――――――
【あとがき】
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