第11話 空飛ぶお風呂


そうか、思いだした。


僕は前世で魔法の国の住民カブラだったんだ。


爵位は公爵だったけど、そんなのは関係ない。


だって、魔法の国の爵位持ちは基本的になんでも出来るから、命令なんてきかないし……


僕が公爵になっているのは、面倒くさいサリナお姉ちゃんの雑用や魔王様の仕事の手伝いを押し付ける為だ。


恐らく、僕より男爵階級の方が実力はあった気がする。


なんでも出来る魔法使いばかりの国で、役職に就くのは、ある意味貧乏くじなのかも知れない。


尤もサリナお姉ちゃんは正義感が強く優しいから、そんな事思ってもいないんだろうな。


それは兎も角、この世界は魔法の国とは関係ない。


だから、掟すら守る必要は無いんだよな。


それに……


① 人間界に居る時は魔法使いとバレてはいけない


違う系統とはいえ普通に魔法使いは居るし……


② 人間界で他人の為に魔法を使ってはいけない


この世界じゃ回復魔法とか普通に他人に使っている


③ 運命を変えるような魔法を使ってはいけない


まぁ、これはやる事はないよ……多分。


大体この世界じゃ違う魔法とは言え普通に使われているんだから全然問題無いよね。


なら、簡単だよ。


僕はこれでも、魔法の天才で頭が優秀で身も軽い。


魔法が使えるようになった今。


恐い物なんて何もない。


同級生には友達、親友と呼べる存在は居ない。


だったら、あと数日間お城で普通に過ごし、お城から出たあとは、まぁ適当な場所を探して自由気ままに暮らすかな。


◆◆◆


「随分と楽に走れるようになったんだな」


「お陰様で体が慣れたようです」


「そりゃ、良かった。それ位速く走れるなら、魔物から逃げる事位は出来るな」


「そうですか……それは良かった」


勿論、これはズルだ。


1日やそこらで速く走れるようにはならない。


魔法で速く走れるようにしただけだ。


「走り込みで人並みに走れるなら、次の段階に入るか? 剣の使い方を少し手ほどきしてやる」


「はい……お願い致します」


教わる必要も無いけど、ここでの1週間は素直にしていた方が良いだろう。


ただ、この世界の事を知る為に座学は頑張らないとな。


これもズルをして魔法で体力の増強をし難なく訓練についていった。


◆◆◆


訓練が終わり、今は自室だ。


しかし、この世界は本当に不便だ。


同級生や王族、貴族は共同風呂はある物の、使用人ようは無い。


当然、使用人と同じ扱いの僕も入れない。


汗を拭くだけじゃ気持ち悪い。


ここでシャワールームでも魔法でだそうかな……


いや、折角だから露天風呂でも楽しもうかな。


「マジック、マジ―アー! 空飛ぶ湯舟よ出ろ!」


僕が呪文を唱えると空飛ぶ湯舟が現れた。


そこにはお湯がなみなみと入っている。


そのまま、僕がお湯につかると湯舟は窓から外に飛び出した。



「ふぅ~気持ち良い」


湯舟の外は空だから風が凄く気持ち良い。


空に浮かんだお風呂から見た月は綺麗で絶景だった。


さて、これからどうしようか?


この世界で僕は自由気ままに生きられる筈だ。


だけど、特にやりたいことは無い。


なんでも出来てしまう事は退屈な事でもある。


まぁ良いや。


今日は、露天風呂? にも入れたし、寝ながらゆっくり考えよう。





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