第140話 仕方のないこと



◆主人公side



 ハッキリって学園へ通うのは日に日に面倒くさくなってきている。


 というのも、そもそも学園で習う事など前世では小学生で習うようなものばかりなので、今さらそんな事を学んだところで何かが変わるとも思えないし、その意味が無いと思う事に時間を消費するのもバカらしいと思ってしまうのが一点。


 そして次の理由に、麦焼酎などの事や魔獣から収穫できる果実の事の方が学園で学ぶ内容よりかは圧倒的に興味があり、できる事ならば今すぐ現地に赴き、いろいろと見て行きたい衝動にかられてしまっているというのが二点。


「あ………そ、その……お、おはようございますっ!!」

「……俺へ無理に話しかける必要は無いと言っている。お前も、作戦は拙かったものの婚約破棄を企てるくらいには嫌っている俺の顔も見るのは嫌だろうし、そんな相手に挨拶をわざわざ自分から行うのはもっと嫌だろう? 俺は既に婚約破棄の一件に関しては何も思っていないし、それに今回の婚約破棄に関してはむしろ俺が最大の原因であり自業自得だとも思っているからお前から謝られる必要も無ければ、謝罪をしろと要求する事も無い。顔も見たくないだろうが、同じクラスなのだからそこは勘弁してほしいとは思うが、一応教室の端で視界に入らないようにはできるだけ努力はするつもりだ」


 最後三点目に、毎回オリヴィアが俺に挨拶をしてくるのが日に日にきつくなってきているというのも大きい。


 一日、二日程度ならばまだ良いのだが、これが毎日続くとなると話は別である。


 そもそもオリヴィアに関しては『婚約破棄してでも逃げ出したい』と思わせてしまったのは俺自身であり、そしてその過度なストレスは人間の知能も著しく低下してしまう為、あの作戦が泥船だとしてもそれに気付かずに、藁をもすがるかの如く乗り込んでしまう気持ちも理解できてしまう。


 故に多少なりとも罪悪感はあるので、ある意味俺は加害者だという認識はしているのだが、この場合の被害者であるオリヴィアから謝罪をされるというのは前世の価値観を持っている今の俺には、婚約破棄をしたいと行動を起こすまで嫌いになった相手に挨拶をしてくれるオリヴィアには悪いのだがシンドイと思ってしまうのは仕方のないことだろう。


 この時だけは記憶が戻る前のクズな思考回路と切り替えられればなぁ、と思ってしまう。


 オリヴィアは俺と違って根が真面目というか優しいというか……。


 そして俺はオリヴィアにもう何度目かの挨拶不要を告げると、そのままマリエルを連れて教室の端にある席へと座る。

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