第85話 永遠の忠誠を誓います

その為にもここはしっかりと、アンドロイドの所有者として主人の考え方や価値観を教育インプットさせるべきところであるので、毅然な態度で『次からはこうして欲しい』と伝えるべきところだろう。


「いや、そうではないけど……こうあるだろう? メイドは主人の後ろで控えて指示が出るまでは何も行動を起こさないとかさぁ……」

「なるほど、ご主人様はそういうメイドがお好みで?」

「……そう言われるとなんか俺が亭主関白のような思考の持ち主みたいに聞こえるじゃないか。もうい良いよ、今のままでも」

「寛大な対応ありがとうございます。買われたのがご主人様である事を、これほど幸せに思う事はございません」


なぜだろうか? 一見俺の事を持ち上げているように見えて、実は嫌味を言っているように聞こえてくるのは気のせいだろか?


「そうですね、ただ一つ問題があるとするのならば、高級オイルが未だにあれ以降買ってくださらないこt──」

「よーーーしっ!! あとでいっぱい高級オイルを買ってあげるからとりあえずそれ以上は黙ろうか? な?」

「さすが、我がご主人様です。永遠の忠誠を誓います」


 分かる。今の俺にはその永遠には『ただし高級オイルを与えてくれる間は』という意味が含まれている事を……っ。


「ふむ、どうだ? このまま息子の正妻は無理でも妾として我が家の一員になるのは? それほど仲が良いのであればカイザルもまんざらではないであろうし、そなたほどの実力者の血を我が家系に入れるのは得策だと思うのだが?」

「お父様、それに関しては丁重に俺の方から断らせていただきます」


 そんな俺達二人のやり取りを見てお父様が『マリエルを妾として迎え入れて子供を作ってはどうだ?』などとふざけた事を言ってくるので、そこはしっかりと断っておく。


 なぁなぁにしてしまうと後でどうなるのか分かったものではないからな。


 しかしながら俺がその提案を断るとお父様はともかくお母様と、そしてマリエルまでが残念そうな表情をするのだけは納得いかないのだけれども、そこを突くと藪蛇になりかねないのでスルーする。


「しかしながら婚約破棄によって異性に対して苦手意識がついてしまったのではないかと心配していたので、どうやらそのような事はないみたいで我は安心したぞ」

「その件に関してはお父様やお母様に心配をさせてしまった事をお詫び申し上げます」

「あぁ、お前が大丈夫であるのならばそれで良い」

「……話は変わるのですが、お父様はマリエルの事についてどこまで知っておりますか?」

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