第51話 人の枠では収まらない者達
「確かに、お前から見れば冒険者ランクA程度など敵ではないのだろうな」
「やはりお前は、あのアーシャだったか……。しかし、俺に勝てないと分かっていながら何故ここに来たんだ? まさか俺たちの仲間になりたいという訳でもなのだろう?」
そして俺の予想通り目の前の女はあの、冒険者ランクAであるドラゴノイドのアーシャで間違いないようである。
しかしながら、本当にあのアーシャであったとして、何故一人でここにいるのかが理解できない。
冒険者というのは我々裏稼業の者達と同じように過ぎたる自信、過剰なプライドを持つ者から死んでいく為、高ランクになればなるほど慎重に行動する者が多くなる傾向がある。
それは死んで居なくなる者もいれば、そういった物を見て自身の態度を改める者など、残酷な現実によって慎重にならざるを得ないのだ。
その中でも唯一態度を改める必要が無い者が冒険者ランクS保持者であったり、帝国七騎士であったり、人の枠では収まらない者達である。
因みに裏社会でそのような者は冒険者ランクS保持者や帝国七騎士によって芽が出る前に討伐される為、逆に過剰な程用心深くなっていく。
しかし、だからと言って冒険者ランクS保持者や帝国七騎士より劣るという訳ではないのだ。
ただ単にこちらは常に対策されて討伐されかねないというだけである。
「当り前だろう。誰がお前の組織に入るものか。そもそも今からお前とこの組織は私が潰すのだから、潰されて無くなる組織に入っても意味がないではないか」
「……舐められたものだな……」
その事を知らずに俺たちを舐めてかかり、一躍有名になろうなどと考える者は所詮二流であり、遅かれ早かれ死ぬような奴である。
そのような奴は大抵冒険者ランクC~B成りたてに多く見えるのだが……俺はここまで考えて『まさかアーシャは数少ない冒険者ランクS保持者に成れるだけの才能がある、人の枠では収まらない人物なのではないのか?』という考えが頭に過る。
いや、そんな訳がない。それほどの人物であればもっとアーシャは表でも裏でも騒がれていた筈であり、ランクSの壁は超えられない『地方では威張れる』レベルが関の山程度の冒険者であった筈だ。
「だって、お前程度……いくら強いと言っても冒険者ランクS保持者か帝国七騎士と同等程度なのだろうしな。そんな程度の奴相手にこの私が負ける訳がなかろう?」
「……ついに狂ったか。しかしながらお前が傲慢でよかったよ。そのお陰で俺はお前が長々と話している間に罠を仕掛けてもらったからね。これでお前は逃げられないし、どう足掻こうがもう俺には勝てない」
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