10 同業者からの評価 下

「俺が……凄い?」


「ああ。冒険者としてはそれなりの立場の俺が言うんだから間違いない」


 それなりの立場。

 曖昧な表現ではあるが、少なくともジーン達がリライタルと共に仲間に加えたのならば、確かにそれ相応の実力を持っている冒険者なのだろう。

 ……それこそ普段は賢者と組んでいるような。

 そうでなければ彼らはラグナを迎え入れない。


 そんな男に。

 そしてある程度行動して仲を深めたわけではなく、命を助けたりしたわけではなく、妙な繋がりがあるだけの初対面のラグナにそう言って貰えたのだ。


 態々嘘を付く理由も彼にはなくて、つまりそれは純粋に自分の薬剤師としてだけの評価で価値あるものだと言ってくれたという事で。


 ……アヤやアスカに肯定してもらうのとはまた別のベクトルで嬉しい事だと思う。

 事実、少しはやってきた事が報われたと、そう思えた。


「全然別件で悩んでいたんだろうけどさ、少しは気が晴れたか?」


「……もしかして俺が変な顔してるのを見て態々話しかけてくれたんですか?」


「アンタがレイン・クロウリーだと知ったのは話しかけた後だろう。最初に声掛けたのは嘘偽りなく地元の人間としてだ」


 それは確かにそうだ。


「……実を言うと本当はな、もっと早くにアンタの事を調べて見付けて、今みてえな話を言ってやるべきだったと思ってる」


「なんで態々そんな……まさか勧誘ですか?」


「残念ながらそうじゃねえ。俺のところのパーティは別にギスギスしている訳でもなく、良い感じにあれで完成しているんだ。今のところはどれだけ優れた奴だろうが誘うつもりはない」


 ただ、とラグナは言う。


「俺達みたいなのから誘われてもなんら不思議じゃない程の力をアンタは持っている。そんな人間が価値の分からねえ奴らに潰されようとしていたんだ。ちゃんと気付けた人間が凄いんだって事を言葉にしてやらねえといけないと思った」


 そこでラグナはふと気になったのか、少し心配そうにこんな事を訪ねてくる。


「そういえばアンタはあれからどうしてる。冒険者をやってるってのが過去形じゃないなら、今はソロか……それかどこかのパーティに入れてもらえたりしたのか?」


「ああ、それなんですけどありがたい事に──」


 言いかけたその時だった。


「あ、レインさん先に来て待ってるっすよ」


「兄さん、変なもの買ったりしてないかな」


「僅かな時間で完全にそっち方面の信頼失っちゃってますね。大変ですねレインさんも」


「「他人事みたいに……」」


 これから話そうと思った仲間達とリカが集合場所へやってきた。


 そして何やら変な不安を抱かれているので何も買っていないジェスチャーを見せていたところで、アヤが驚いたように言う。


「あれ……レインさんの隣に居るの……ラグナさんっすか!? お久しぶりです!」


「ん……誰かと思えばアヤじゃないか!」


 どうやら知り合いのようで、ラグナもそんな反応を見せる。


「俺の仲間の事、知ってるんですね」


「狭い村だからな……村の連中はほぼ全員が全員と顔見知りだよ」


 と、そこでラグナはハッとした表情を浮かべる。


「あれ、ちょっと待てよ。仲間って事は……アヤ、冒険者になってたのか!? 家を出たってのは耳に入ってたけど本当かよ!?」


「あはは、そうっすね……教わってた弓のおかげで」


 どうやら……アヤの代わりにジーン達の仲間になっていたのは、アヤの弓の師匠だったらしい。


「しかし冒険者……いや、でも1年半位前に俺が帰省した時は……」


 何やら簡単な話ではなさそうだが。

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