第17話 撃退


 リュのことを見つめていると、エイダンが声をかける。


「お前、誰なんだよ」

「殺す奴に名乗る意味もないだろ」

「あぁそうかよ‼」


 エイダンは俺にアイコンタクトを送ってきながら、魔族に攻撃を仕掛ける。だが、あっさりと避けられてしまい、エイダンの背後から反撃を仕掛けたため、援護する。


(重い……)


 力で押し切られそうになったところで、エイダンが加勢に入り、距離を取る。すると、すぐさま距離を詰めてきて戦闘が開始する。


 俺とエイダンが連携よく行動をとっていることから、ギリギリ均衡が保たれているが、徐々に押され始めてくる。


(この状況じゃやばい)


 俺がそう思っている時、距離を取ってきた。


「めんどくせ。一斉に殺すか」


 魔族は魔法を唱え始めると、頭上に炎玉かえんだんが現れる。


(あんなの食らったらやばい)


 後ろにいるクレアやミアたん、Bクラスのみんな全員が死ぬ。


(考えろ、何が最善策なんだ‼)


「あ」


 とっさに後ろを振りむき、クレアに言う。


「俺の剣に風魔法を付与して」

「でも、そんなことをしたら剣が」

「分かっている。だけど、今はこれしかないんだ」


 クレアの言う通り、武器に魔法を付与すると数分も持たずに粉砕してしまう。だけど、今はこれしかない。


「分かった」


 剣に風魔法が付与されたタイミングで炎玉かえんだんを放たれた。その時、俺はエイダンに言う。


「俺を信じて前に突っ込め」

「分かった」


 炎玉かえんだんが俺とエイダンとぶつかりそうになった時、真っ二つに切り裂いた。


 それを見た魔族は驚きを隠しきれていなかったが、その一瞬を見逃さなったエイダンが翼に重傷を与える。


「人間ごときが‼」


 叫び出して、俺とエイダンに向かって突っ込んでくる。それと同時に俺たち二人も前に走り出した。


 普通なら待ち構えた方がいい。だけど今持っている剣は、もって残り一・二分。その間にけりをつけなくちゃいけない。


 そんな状況で悠長に時間を使うことはできない。


 エイダンが魔族の攻撃を受けつつ、俺が攻める。そんな攻防を三十秒ほど行ったところで、魔族の体に切り傷が増え始めていた。


(今しかない‼)


 俺は魔族との間合いを一歩踏み込んで、攻撃を仕掛ける。


「リアム‼」


エイダンが言いたいことは分かる。間合いを間違えたら確実に死ぬ。だけど、ここで攻めなければ、俺たちは勝てない。


 魔族がにやりと笑いながら攻カウンターをしてくる。俺はその攻撃に剣で防ごうとすると、寸止めをして、不意を突くように翼で攻撃を仕掛けてくる。


(そう来ると思っていたよ)


 体を捻り、翼の方へ向いて切り落とした。


「あぁぁぁぁぁぁぁ」


 悲鳴を上げながら、炎玉かえんだんを放ってくる。それを俺は切り裂くと剣が崩れ落ちていった。


「お、お前だけでも絶対に殺す‼」


 俺へ殺気を飛ばしてきながら距離を詰めてくる。


(俺の勝ちだ)


 俺の目の前にはエイダンが立っており、魔族の腹部へ剣を振った。すると、腹部からも紫色の血が流れていた。


「クソ、クソクソクソ」

「お前だけでも絶対に‼」


 そう言って、俺に向かって光矢ライトニング・スピアを放ってきた。


(避けられない……)


 下を向いた瞬間、腹から血が流れてくる。その時、後方から悲鳴が聞こえてくる。


「絶対に殺すからな」


 そう言って、魔族はこの場から消え去った。


 その時、後ろからクレアとミアたんが駆け寄ってきて何かを言っていたが、俺は意識を失った。

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