第211話  姉妹の差

 ダンジョンの奥、俺たちの進行方向を塞ぐようにして現れた、巨大なイモムシのようなモンスター……デスワーム。

 めちゃくちゃ気持ちの悪い見た目をしており、女性の探索者の中では遭遇したくないモンスターランキングで常に上位にランクインするレベルだ。

 まあ、気持ちは分からんでもない。

 見た目は完全にミミズとイモムシを足して二で割って全身に泥水をぶっかけたような感じだ。

 しかもそれにプラスして体長数メートルにも及ぶ巨体を有しており、個体差はあるもののデカイものだと十数メートル級なんてのも過去には報告されている。


 結論。

 デスワームは女性探索者からすこぶる評判の悪いモンスターではあるが、男の俺からしても好んで遭遇したい類いのモンスターではない。

 そんなモンスターは、俺たちに汚ならしいうねうねとした口を開けて威嚇してくる。


「プギュギュァアアアア……!!」


 のそり、と鎌首をもたげる。

 そこまで広いというわけでもないダンジョンの通路を、デスワームの体が埋め尽くした。

 先へ進みたければ、こいつを突破していくしかないらしい。


 黒刀を携えながらどう倒すか思案していると、隣の心春が神妙な面持ちで俺を見上げてくる。


「せ、先生。あれは、デスワームですか!?」

「だな。やっぱお前も苦手か?」

「そう、ですね。こういう狭い場所だとああいう大きな体で押し潰してくるような広範囲の攻撃はちょっと対応が難しいです。多少動きが読めたとしても、逃げ場がなかったらどうしようもないですし」

「あん? ああ……まあ、そりゃそうなんだが。つーか、あの気持ち悪い見た目は大丈夫なのか?」

「え、見た目ですか? あっ、そう言えばルリィちゃんはすっごく苦手にしていたモンスターだったと思います。見つけたら速攻で逃げるか、どうしても倒さなきゃならない時は遠距離スキルで少しずつ削って攻撃する戦法しか取らなかったですし。でも、私は平気ですよ?」

「お、おお、そうなのか。お前、意外と肝が座ってんな」


 デスワームはあの彩夏も大嫌いなモンスターだってのに。

『FIRST』で活動してた頃、あいつもワーム系のモンスターと遭遇したら有無を言わさぬ速度で一瞬にして焼却処理してたからな。

 一秒足りともワームの姿を視界に入れたくないという確固たる意思を感じ、全身丸焼きにした上からさらに火だるまになるよう追撃し、明らかなオーバーキルでワーム共を葬り去っていた。


 姉がそんなだってのに妹の心春は真逆だな。

 デスワームは苦手とは言っていたが、それは見た目が気持ち悪いからなんていう感情的な理由じゃなく、単純に範囲攻撃で来られたら対策できないからという極めて論理的な理由だった。


 全く、この姉妹の差を彩夏に教えてやりたいくらいだぜ。


「ま、デスワームが気持ち悪いと思わないなら問題ない。強烈な忌避感ってのも、それはそれで判断を狂わされるからな」


 十年前の彩夏の暴走っぷりを脳裏に思い返しながら、しみじみと口にする。

 そして俺は黒刀を構え、デスワームと対峙した。


「とはいえキメェのは確かなんだが、ちゃちゃっとイモムシ狩りでも始めるとするか」



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