第5項 再会のゴミカス


 目を開けると、そこは見慣れた寝室だった。


 手をかざして見てみる。

 くたびれた今の俺とは違って、艶やかな肌だ。


 まだ若い。


 飛び起きて鏡を見ると、まだ15、6歳のようだった。


 顔は俺のものだ。

 生まれ変わって別人になった訳ではないらしい。


 まだ髪も薄くなく、太ってもない。

 目尻の皺もない。肌艶に生気がみなぎっている。


 この顔は、ルーク・フォン・クラムそのものだ。


 「ルーク様」


 どこからともなく声がする。

 これは、家付きの執事の声だ。


 「早くしなければ、成人の儀に遅れてしまいます」


 『あぁ、そうか。これから成人の儀に行くのか』


 俺は、それから王宮に行き、王様に謁見し、騎士の位を叙勲された。

 まぁ、貴族として一人前と認められたということだ。


 そして領地に戻る。

 ひどく気持ちが落ち着かない。


 そう、今日は初めて専属のメイドがつく日。


 メイに初めて会った日なのだ。

 

 居室で待っていると、ノックの音がする。

 そして、執事に連れられ、メイが俺の部屋にやってきた。


 メイも俺の記憶の中より若い。

 前には思わなかったが、こいつ、こんなに美少女だったのか。


 身長は150くらいで、銀色のロングヘアだ。

 透き通るような白い肌で、ブルーサファイアを思わせる真っ青な瞳をしている。


 執事にせかされてメイが挨拶をする。

 その声も美しい。

 

 名前なんて聞かなくても、分かる。はるばる会いに来た相手なのだ。


「わたしはメイと言います。今日からルークさまの専属メイドとなるよう仰せ付かりました。どうぞ、よろしくお願いいたします」


 悪魔に魂を売ってまで戻ってきたのだ。

 現世では、メイを大切にしたいし、結婚してもいいくらいだ。


 

 その時の俺様は簡単に考えていた。

 どうせ、メイも俺様の事が好きに決まっている。


 労せずとも、ちょっと優しくしてやれば簡単に籠絡するだろうと。


 しかし、そう簡単にはいかなかった。


 俺は、メイのことを何も知らなかった。


 知ろうともしなかったし、興味もなかった。


 メイの出自も、好きなものも、性格も。何も知らなかったのだ。

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