if ボルナット
やっとの思いで彼女の侍女、ミラが何処にいるのか突き止めた。
ミラはメイド仲間にこっそり話していたようだ。
外国へ行く、どこへ行くかは言えないがソフィアの事を守ると。
そして彼女たちの知り合いがいる外国といえば……
考えればすぐに分かったはずだった。
ステラ王女殿下。
彼女が嫁ぐ国ボルナットだ。
ボルナット……大国だ。
他国間のどのような戦争にも加わらず中立の立場を崩さず、強大な国家となった国。
我が国は軍事国家、戦争で国土を広めてきた国だ。逆にボルナットは防衛力に長けていてる国だ。
先駆的な設備を誇り、どんな敵が攻め入ろうとも鉄壁の守りで敵を寄せ付けないという。戦わず平和を維持するため王族同士の婚姻を政略的に決める国。
今回、ステラ王女は国同士の平和維持の為、ボルナットの第一王子と結婚する。
彼女が国外へ行けたのは、ステラ王女の援助があったからか……
もしかしてステラ王女の侍女としてボルナットに渡ったか。
だとしたらソフィアに会う事は難しいだろう。
自国にいた時でさえ王女との謁見は叶わなかった。
ボルナットの王太子妃になったら謁見なんて絶望的だ。
だが貴族籍を抜いたという彼女が王宮へ立ち入る事ができるかどうかは微妙な所だろう。詳しい居所が分かれば……
コンタンは頭脳派だ。私がどう言おうと絶対にソフィアの居場所を教えてはくれない。
それからミラの田舎に使いをやった。
元勤めていた邸の使いだと言って、ミラの両親から行き先を聞き出すのは簡単な事だった。
だが流石に詳しい住所までは知らされていないらしかった。
私はどうしても、もう一度ソフィアと話がしたかった。
間違いは誰にでもある。
今度こそちゃんとやり直したい。
もうマリリンは邸から追い出した。彼女が邪魔に思っている者は誰もいない。
きっとソフィアは分かってくれるはずだ。
私はボルナットに調査員を送った。
多分ステラ王女はソフィアを遠くへはやらないだろう。ならば彼女は王都にいる。
けれどあの国の王都は広い。
それまで貴族風の平民で金があり、女二人だけで最近我が国から入国した者がいないか調べさせる。
ボルナットの調査会社を使えばわかるかもしれない。
知らせを待つしかないか。
トントントンとドアをノックする音が聞こえた。
「旦那様、執務の仕事が滞っております。サインが必要な書類もありますので急ぎ目を通していただきたい」
モーガンが私を呼びに来た。
「今まではちゃんと執事たちでやっていただろう。私がいなくても領地経営はうまくいっていた。コンタンに任せればいい。彼はその為に雇っているのだからな」
コンタンが私に協力しないのなら、彼は自分の仕事をきちんとこなすべきだ。
私の邸の執事としてこれからも働きたいのなら、領地の為に身を尽くすのが当たり前だ。
ソフィアの事に協力さえしてくれれば、こんな嫌がらせをしなくて済んだのに……
苛立ちは限界に達している。いう事を聞かない使用人、出て行った妻、領民たちからも私に対する信頼を感じない。
何もかもうまくいかない。
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