「沈黙」遠藤周作

 キリシタン弾圧の時代、日本にやってきた宣教師が主人公です。


 人間の弱さや信仰が果たしていた役割、村人たちの姿がありありと描き出されています。

 史実を元にした小説というものの難しさは、多方面からの鋭く厳しいツッコミに耐えうる内容でなければ、作者の後が厳しくなる点にあると思います。

 だからこそ手抜きなんか一切できないし、それでも埋められない穴や解釈の違いのために侃侃諤諤の議論に巻き込まれることでしょう。

 それを覚悟で遠藤周作は書き切ったのだという感じがします。自らがキリスト教徒で、日本人に生まれた使命感のようなものがあったんじゃないか?と勝手に想像しちゃいますね。


 遠藤周作がノーベル賞を獲れなかったのは、この作品を執筆したことで審査員から嫌われたから、と一説にはあります。読んでみると、なるほど、これは嫌われるね!とうんうんうなずいてしまいました。

 しかし、嫌われるほど力強い作品でもあります。私は信仰もの、けっこう好きです。

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