蝶々のスカーフ

 朝一番に仕立て屋へ来たのはスカーフの修繕依頼だった。深緑の地に蝶の刺繍が施された一枚。

「ここの蝶がどんどん抜け出してしまうんです」

 確かに所々刺繍模様が抜けている。確認すると原因はすぐにわかった。

「お花の刺繍がほつれてますね。それで抜け出したんですよ、蜜を探しに」

 いつもの花で吸えなくなったから外へ出てしまったのだろう。これなら話は簡単だ。

「お花の刺繍を修繕しましょう。大丈夫、それで皆戻って来ますよ」

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