傘越しの海

 ただのビニール傘だと思ったそれは雨の日に開くと内側に水中の景色を映す傘だった。ビニールには空や雨粒と重なる様に半透明の魚の群れが泳いでいる。今上を横切った大きい影はマンタかな。

「良い傘ねえ」

 綺麗な魚達と一緒に雨の街を散歩するのはなかなか素敵な気分だ。ふと思い付いて傘を下に向けると案の定綺麗な珊瑚礁が見えてまた嬉しくなる。

「あれ?」

 傘の柄の下部分に何かある。小さな文字で『前世の記憶』と刻んであった。

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