第45話 きららアカデミー3期生・モナカ&ライムス
ついに5月28日がやって来たよ。
時刻はもう間もなく11時40分。
私とライムスは指定番号336ホールに来ていた。
このホールは一昨日までは誰でも入ることが出来たよ。
けれど今日の配信のために、サニーライトさんが500万以上もかけて買い取ったんだって。
正直、かなりのプレッシャーを感じるよ。
「さすがに緊張してますね、天海さん」
ホットのお茶とオレンジジュースを持って、田部さんが隣にやってきた。
「これでも飲んで気を落ち着かせてください。はい、ライムスくんの分もあるよ」
『ぴきぃっ!!』
「ありがとうございます、いただきます」
温かいお茶を頂くと少しだけリラックスできた気がするよ。それでもドキドキしちゃうけど……。
「ま、最初は誰でも緊張しますよ。大手事務所で看板張ってるDtuberだって、最初は初心者だったんです。私から言えることはただ一つ。全力で楽しみましょう! それだけですかね。天海さんとライムスくんが楽しそうにしていれば、自然と視聴者さんはついてきてくれますよ」
「そ、そういうものなんですかね?」
「えぇ。そういうものです。さてと、私は機材の最終チェックをしてきます。天海さんはギリギリまで好きにしててください」
「あ、ハイ。ありがとうございます。――ライムス、こっちにおいで?」
『ぴきゅーっ!』
残りの時間、私はライムスを抱えて過ごすことにした。
結局は、こうやってライムスと一緒にいるのが一番落ち着くからね。
それから15分後。
田部さんに呼び出されて、私とライムスはホールの前に立った。
「装備品オッケー、回復アイテムオッケー、ドローンオッケー。異常事態発生に備えブラック・シーカーの配置も完了しています」
ブラック・シーカーというのはカメラに映らない探索者のことで、簡単に言うと縁の下の力持ちだよ。
「天海さん、いよいよですね。ま、所詮はF難度ダンジョンですし、あまり気負わずに行きましょう。ブラック・シーカーもAランクの方を呼べたみたいですしね」
「ここまでお膳立てされたからには、なんとしてでも成功させたいです!」
「ふふ、気合いは充分といったところですか」
「ハイ! 同接3万、頑張って達成してみせます! ライムス、頑張ろうねっ!!」
『きゅぴぃっ!!』
かくして、5月28日12時00分。
【モナカ&ライムス デビュー初配信】が始まった!
#
ホールを潜り抜けると、そこには感嘆の息を漏らしてしまいそうになるほどの、美しい青が広がっていたよ。
1センチくらいの高さの水たまり、それがただひたすらに、地平線の彼方まで広がっている。
真っ白な入道雲が天高くまで伸びていて、でも、雲はそれだけだね。空も地もただただひたすらに澄んだ青色をしていて――。
「わぁお、すごいねこれ。こんなにきれいなダンジョン、滅多に見られないよ」
――――――――――――――――――――
Jun
<キターーーーーーッ!!!!!! あのカウントダウンまじで新人デビューだったんかい!!
るー
<初見です。カウントダウン企画から飛んできました
あ あ
<シルエット公開された時点でまさかとは言われてたけどなー
上ちゃん
<こんにちは~。古参としては超嬉しいよ。つーかビビったw
ライムス推し
¥50000
<キタ――(゚∀゚)――!! マジで待ってました、ライムス最強ッ!!!!!
spring
<はえー、すっごい
じろう
<開始1分で同接1000超えワロタwwwww
村人B
<やっぱりあのシルエットってそうだったんだ、マジで嬉しいです!!
――――――――――――――――――――
配信が始まると、あっという間に同時接続数が1000を超えて、私は目を丸くして驚いた。
いくらカウントダウンの企画をやっていたとはいえ、こんなに注目されてるなんて思ってもみなかったよ。
うわ、まだまだ上がっていくよ。
やっぱり事務所所属ってなると、個人の時とは全然違うんだね!
「みんな、今日は来てくれてありがとう! もう知ってる人も多いと思うけど、さっそく報告させてもらうよ。私、天海最中とライムスは今日から『きららアカデミー』の3期生としてデビューすることになったよ! とはいっても、配信の内容自体は個人の時とあまり変わらないけどね。っていうことで早速、ゴミ掃除やっていくよ! ここのダンジョンは一昨日までは誰でも入れたから、きっとゴミが落ちてるよ。ライムス、きれいにできるように張り切っていこうねっ!」
『ぴきぃっ!!』
「って、さっそく5万円のスパチャが飛んでるぅぅうっ!?? わあ、ライムス推しさん、応援してくれてありがとー!!」
――――――――――――――――――――
上ちゃん
<開幕から5万はヤバすぎwwwww
1999
<初見です。盛り上がってて楽しそうだから来ました~
ボブ
<スライムくんかわええ~~
通りすがりのLv.99
<鰻丼風焼きおにぎりの配信でファンになったけど、あっという間に人気出たな。すげーや
ライムス推し
<ライムスしか勝たん
りーお
<ライムス推しさんナイスパです!
No.13
<わー、超盛り上がってるじゃん!
Jun
<同接5000超えたwwwww
――――――――――――――――――――
「えっ、もう5000人超えたの!? わぁ、緊張するなぁ~」
この分だと、あっという間に1万とか行っちゃうかも!?
そんなことを思いながらダンジョンを進んでいくと……。
『ゴブゥ~~ッ!!』
「おっ、さっそくモンスターが出たね!? ライムス、これはチャンスだよ。私たちの連携を視聴者のみんなに見せつけちゃおうっ!!」
『きゅぴぃ~~っ!!』
さっそくやってきたチャンス。
みんなにいいところを見せられるように、全力で頑張ろうっ!
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