第25話 緊急レイドクエスト・洞窟のダンジョン
翌朝。
私は例のごとく息苦しさとぽよぽよ感を感じて目を覚ました。
『ぴゆぅーっ!』
「ふあぁ。ライムス、おはよー」
『ぷきゅっ』
「うんうん、分かってるよ。すぐ行くから」
『ぴゆー』
私を起こすと、ライムスはぽよんぽよんと部屋を出て、居間に向かっていった。
私は身を起こして布団を整えて、居間に向かった。
カーテンを開けると陽光が差し込んできて、今日も1日の始まりを感じるね。
それにしてもここ最近はいい天気が続くね。
お陰で朝からいい気分だよ。
『ぷぃーーっ』
「うん、いま朝ごはん作ってあげるからね」
今日のライムスはちょっとお腹が空いてるみたいだね。
私はトーストとコーヒー、ライムスはシリアルと牛乳、それから冷蔵庫の野菜室からバナナを取り出して、それをカットしてあげたよ。
「それじゃ、いただきます!」
『きゅぴーっ!』
今日は、朝ごはんを食べたら軽くお散歩でもしようかな。
こんなに天気が良いんだし、ダンジョン配信は10時からでもいいよね。
そんなことを考えながら朝食を摂りつつ、スマホを弄る。
すると、ぴこんっ! とメールを受け取った。
しかも送信者名は『探索者協会・本部』とある。
「ん、なんだろ?」
えーと、どれどれ?
――――――――――――――――――――
※探索者協会・本部より緊急レイド開催のお知らせ※
本日12時30分より指定番号167ホールにてEランクレイドを開催します。
場所:東京都豊島区東池袋3丁目
推奨レベル:10~
参加上限:50人
報酬:参加者1名につき3万円。
:ボスの討伐者に50万円。
:討伐支援者に5万円。
レイドリーダー:
サブリーダー :
依頼内容:回避行動・隠密行動に長けた徘徊型のダンジョン・ボス:『ゴブリン・アサシン』の討伐。
概要:ダンジョンが出現してから間もなく28日が経過します。ダンジョン・ブレイクの兆候を観測したため、迅速な討伐を求む。
当ダンジョンにはボスフロアが無く、地形は洞窟型。『ゴブリン・アサシン』は最深部、第4層にて潜伏中。
――――――――――――――――――――
「うわあ、すごいねこれ」
探索者協会が本気になってるよ。
EランクのダンジョンにCランクとDランクの探索者を向かわせるなんてタダ事じゃない。
しかも参加者上限50人!??
すっごい大型レイドだね!
でも、焦るのも無理はないよね。
だって、ダンジョン・ブレイクの兆候が見えてるんだもの。
ダンジョン・ブレイク。
それは極甚災厄にしていされているよ。
通常のダンジョンは、ボスを倒すことで消滅する。
でも、ボスを残したまま時間が経つと、ダンジョン内に魔力が充満しちゃうんだって。
ダンジョン内に溜まった魔力は少しずつ濃くなって、凝縮されて、圧縮されて――やがて限界を迎えると、文字通りの大爆発を起こすらしい。
その時のエネルギーは甚大で、文字通り、ダンジョンをブレイク……つまりは崩壊させるほどだと言われているよ。
ダンジョンが崩壊すると、大量のモンスターがこっちの世界に流れ込んできて、大パニックになる。
みんながみんな戦えるわけじゃないし、こっちにはインフラ設備とかもあるからね。
そういうわけだから、ダンジョン・ブレイクは絶対に起こしちゃいけないって言われている。
最後に起きたのは8年前、場所は愛知県の知多市。
被害は甚大で、未だに立ち入り禁止が解除されてない区域もあるよ。
「東池袋3丁目。そんなに遠くないよね」
私はまだFランクだし、Cランクの人と探索できる機会なんてそうそう無い。
もしかしたらこれは凄いチャンスなのでは?
CランクとDランクの探索者。
その人たちの戦い方を近くで見ておくっていうのは、すごく貴重な経験になる気がするな。
「よし決めたっ! 今日はこのレイドクエストに参加しよう。ダンジョン配信はお休みだね」
『ぷゆい?』
「ライムス、今日はEランクのレイドを受けるよ! 参加するだけで3万円も貰えるし、活躍次第ではもっと稼げるかもね。何より、ランクの高い探索者が来てくれるんだ。こんな絶好のチャンス、逃したら勿体ないよ!」
#
指定番号167ホールは東池袋中央公園の北側入り口に出現したらしく、公園は丸ごと封鎖されていた。
ぐるりと規制線が張られていて、監視員さんが忙しそうに誘導をしている。
道路に半分はみ出る形で出現していて、通行止めにされている箇所もあったよ。
探索者であることを説明すると、警備員さんは快く公園に入れてくれた。
公園内には多くの探索者の姿があって、ちょっと驚いちゃう。
ライムスも心なしかソワソワしているよ。
時刻は11時46分。
もう間もなく、レイドリーダーの結城さんから説明があるらしいね。
私は近くのベンチに座って、待つことにした。
時刻が50分を回った頃。
キーーン、と耳鳴りみたいな音が聞こえて、それから男の人の低い声が喋り始めた。
「えー、皆さんこんにちは。私は今回のレイドクエストでリーダーを担当する結城総一郎と申します。ざっと見た感じですが、既に100人以上は集まっていそうですね。この分だと抽選になるでしょうから、参加希望者の方は今朝のメールに返信しておいてください。――えー、では本題に入ります。まず今回のレイドですが、メールにも記載されている通り【緊急】のクエストとなっております。皆さんから見て左手側……あのホールはあと2日か3日でブレイクするでしょう。ダンジョン・ブレイクが起こればどんな惨状が招かれるのか、それは誰もが知っているはずです。なんとしてでもダンジョン・ブレイクを阻止する。それが我々の役目になります。Eランクダンジョンだからと油断せず、気を引き締めていきましょうっ!」
結城さんの話が終わってから20分後には、探索者協会からのメールが届いて、抽選結果が発表されたよ。
私はドキドキしながらメールを開く。
するとそこには――。
――――――――――――――――――――
探索者名:天海最中
抽選結果:当たり
ナンバー:36
――――――――――――――――――――
「わっ、や、やった! やったよライムス、当たったよ! レイドクエストに参加できるよ! やったあっ!」
嬉しさの余りライムスを抱きしめると、ライムスはぺろぺろとほっぺを舐めてくれた。
ちょっと冷たくてくすぐったいけど、ちっちゃい舌がかわいいんだよねぇ。
「ライムス、少しでも貢献できるように頑張ろうね!」
『ぷゆっ!』
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