第59話6-8 失踪

6ー8 失踪


マリアンヌが僕の前から姿を消したのは、それからしばらくたった頃のことだった。

季節は、秋から冬へと変わろうとしていた。

そんな晩秋の日のことだった。

彼女は、何も荷物を持ち出すこともなく、突然に姿を消してしまった。

僕に残されていたのは、たった一枚の手紙と数個の飴玉だけだった。

『夢が覚めるときがきました』

マリアンヌは、僕のストレージ内からいきなり姿を消してしまった。

ストレージ内の人が外へ出るには、僕の許可が必要だ。

普通は。

彼女は、どうやって僕の許可なしに僕のストレージから出ていったのか?

それは、きっと僕がナツキ兄さんたちを助けた方法と同じだろう。

誰かが。

ストレージを持っている誰かが自分のストレージから僕のストレージへと干渉したのだ。

奴、だ。

僕は、直感した。

アウデミスが、奴が自分のストレージを僕のストレージと繋いでマリアンヌを連れ去ったのに違いなかった。

このままだと、魔の森の村が危険だ。

僕は、とりあえず、ストレージを強化することにした。

「もはや、僕以外の誰もこのストレージ内にアクセスすることはできない」

僕は、ねんのため二重、三重にストレージの防衛を強化した。

でも、アウデミスが僕のストレージに触れたことは消せない事実だった。

奴は、見たはずだ。

この人と魔族が共に暮らす場所を。

「奴は、なぜ、村を襲わなかったのかな?」

僕は、ハヅキ兄さんに聞いてみた。兄さんは、頭を振った。

「わからないな。奴は、まだお前の力がどういうものか、わからず、警戒したんじゃないか?そんなことよりも、ストレージの中は安全だと思い込んでいた。油断していたな。村の警備をもっと厳しくしよう」

僕には、アウデミスの考えていることがわからなかった。

なぜ、魔界を攻撃するほど魔族を憎んでいながら、この村を攻撃しなかたのか?

なんで。

一度は、手放したマリアンヌを取り戻しに来たのか。

「アウデミス・・」

僕は、呟きを漏らした。

「どうしても、戦わずにはいられないのか?」

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