第8話1-7 調味料の作り方

1ー7 調味料の作り方


家ができたら、次は、食だ。

村には、生産職のスキルがある者が何人かいて、その人たちがちょっとした農具やら、武器やらを造っていた。

だが、それは、あまり出来のよいものとはいえなかった。

僕は、それらの物を組み替えたり、作り直したりしていった。

だけど、問題は、道具なんかじゃなかった。

村には、一応、畑らしきものもあったのだが、そこではトウモロコシによく似たペルという野菜だけしか作られてはいなかった。

たまたま、森に迷い込んだ行商人が持っていた種があったので、ラック爺が作り始めたのだった。

今では、この村の主食は、このぺルの実を粉にしたものを練って薄く伸ばして焼いたものだった。

ぺルは、あまり土壌のよくない森の中でもよく育つ唯一の食物だった。

だが、それ以外の野菜類は、ほぼなかったため、村では、脚気になる者がかなりいた。

おそらく野菜不足によるビタミンの欠如が原因だ。

僕は、何種類かの野菜の種を作り出すことにした。

森に行き、森の中にはえている僕の知っている野菜に似ている植物から、野菜の種を作った。

僕は、カボチャに似た植物に言った。

「おいしくて、栄養のあるカボチャになれ」

そして、村のラック爺の畑に行くと言った。

「畑は、土が盛り上がり、水捌けがよくなり、大地は肥え、なんでもよく育つようになる」

僕の言葉に従って、大地は、もくもくと盛り上がり、土は、柔らかく細かくなっていった。

僕がやっていることを見守っていたナツキ兄さんが感嘆の声を漏らした。

「まさか、言霊にこんな使い方があったとはな」

僕と人化したナツキ兄さんは、一緒に畑を耕すとそこにカボチャの種を蒔いた。

「早く大きくなれ。そして、おいしくなれ」

僕が言うと、野菜たちは、みるみるうちに成長して子供の頭ぐらいの大きさのカボチャの実がなった。

あれ?

僕は、さすがに、ちょっと小首を傾げた。

こんなに成長するのが速いなんて、ヤバくね?

僕は、あっという間に大きくなって実っていく野菜たちに内心びびっていた。

こんなに言霊に効き目があるとは。

「すげぇな、ユヅキ」

知らないうちに、僕には、『レベル99の農民』という称号が与えられていた。

僕は、オルガやホブゴブたちと一緒に畑を徐々に拡げていった。

そこで、僕は、小麦や大豆に似た穀物を育ててみた。

「だけど、こんなもの、どうやって食べるってんだい?」

ホブゴブに聞かれたので、僕は、刈り取った小麦をストレージに収納してから言った。

「小麦粉になって袋に詰まって出てこい」

小麦粉は、木の繊維で編まれた袋に入って出てきた。

僕は、それでパンを作ることにした。

小麦を練りながら、僕は、唱えた。

「ふっくら美味しいパンになれ」

すると、なぜか、いきなり焼き上がったパンが現れた。

ええっ?

僕は、さすがに驚きを隠せなかった。

マジで、すごすぎ!

「この世界には、魔力があるからな」

ハヅキ兄さんは、僕に言った。

「余計に言霊が力を持つんだろう」

僕は、調味料が欲しかった。

胡椒、塩など。

今まで焼いたり煮たりしただけで素材の味に忠実な料理ばかりだったので、調味料があれば、きっと料理に幅ができると思ったのだ。

僕は、森の中のどこかに胡椒とかに似たものがないか、探したかった。

「森の地図が欲しいな。僕の望むものがどこにあるかを教えてくれる地図」

僕が呟くと、目の前にマップが現れた。

それによると、胡椒みたいなものが村から比較的近くにありそうだった。

僕は、そこを探していった。

そこには、くしゃみ花があった。

僕は、くしゃみ花の種から胡椒のような物を作った。

塩は、しょっぱい蜜のある花の実から作ることができた。

これで、飛躍的に村の食事は、変わった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る