第4話1-3 転生の門
1ー3 転生の門
遠くで兄さんたちの話し声が聞こえていた。
「ユヅキ・・思い出してしまった様だな」
フェンリルのハヅキ兄さんが言うと、レッドドラゴンのナツキ兄さんがちっと舌打ちした。
「忘れていればいいものを。この世界の神も余計なことをしてくれる」
「ああ」
カピパラ・・いや、プーティのカヅキ兄さんがのほほんとした声で言う。
「忘れていれば、このまま、幸せに生きていけたのに」
「しかも、無職で、スキルもなし、だと?」
ナツキ兄さんが怒りのこもった声で言った。
「この世界の神もクソだな」
「大丈夫、だ」
ハヅキ兄さんが言った。
「例え、ユヅキがどんなに神に疎まれようとも俺たちがついている」
「そうだ」
カヅキ兄さんが言った。
「僕たちが守るんだ。ユヅキを」
「呪いじゃ」
老いて乾いた、嗄れ声が聞こえた。
「それが悪神の呪い」
悪神は、神殺しであるこの僕に呪いをかけたのだ。
僕は、決して、幸せに、安穏に暮らすことは許されない。
僕は、この世界の神からも受け入れられることは、ない。
僕がそれを知ったのは、転生の門を潜るときのことだった。
「お前は、神殺しとして永遠に呪われるのじゃ」
門番の老婆は、笑いながら僕に言った。
「じゃが、それも不憫なことよ。特別にこの婆の加護をつけてやろう。それに守護者も、な」
「守護者?」
僕が問うと、老婆は、答えた。
「何、お前もよく知っておる者たちじゃ」
「ええっ?」
僕の目の前に3人の兄たちが現れた。
「兄さんたち?」
「この者たちは、みな、お前のために生き、死んだ」
老婆がききっと奇声をあげて笑った。
「じゃが、再び、お前を守るために生きたいと望んでおる」
「兄さん?」
「ユヅキ、お前は、俺たちの大切な弟、だ」
長兄の葉月兄さんが言った。
「俺たちは、何度でも、お前を守るために生きて、死ぬ」
「いや、何度でも、というのは」
一番下の兄がもごもごと呟いたのを他の兄たちがぎろりと睨み付け黙らせた。
葉月兄さんが言った。
「とにかく、俺たちは、佑月のために生きたい」
「そういうわけじゃ」
老婆がくききっと笑った。
「お前たちは、共に生きるがいい」
ぎぃっ・・と重い扉が開いて、光が差した。
「この、異世界で、な」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます