第30話 友情っていいね
やっと鉄鉱石のゴーレムを倒した。石のゴーレムより時間かかったなぁ。
「経験値おいしいけど、あんまり戦いたくないね……」
リリもちょっとお疲れみたい。木魔術は鍛えられたっぽいけど。
「ドロップアイテムは【鉄】十個と【土魔石】だったな」
「あ、僕は【黒曜石】ももらったよ」
「はあ? なんでモモだけ……」
「幸運値の勝利!」
ふふん、と勝ち誇ってみたら、ルトが苦々しい表情になった。悔しかったら幸運値を上げるんだな!
「僕、レベル上がったからSP振るね」
「モモが先に上がったんだねー」
リリに羨ましそうに言われた。きっと二人ももうすぐだよ。
種族レベルが11、魔術士レベルは6になった。魔術士レベルが上がると、魔術系のスキル全般の威力が上がるらしいから、次のバトルはもうちょっと楽になるはず。
ステータスは素早さを上げておこう。……そろそろ物理攻撃力も育てた方がいいかな? でも、僕の体格だとどうしても体術とかって効果小さい気がするんだよねぇ。
「リリはまだ一人で警戒できる?」
「任せて、がんばる」
「どうせ音につられてすぐ近づいて来るんだろ。
確かに、ゴーレムは倒すのに時間がかかるだけで、危険度はそんなに高くないもんね。
ということで、リリに見張りを任せて再び採掘。時々襲ってくる鉄鉱石のゴーレムとバトルしながら、順調に採掘ポイントを消費していく。
鉄、シルバー、石炭などなど、色々と掘れて嬉しい。錬金が捗りそうだなー。次は何を作ろう?
……アリスちゃんへのプレゼントのためには、サウス街道に行って【チェリー花】を採ってこないとなぁ。
「二人はサウス街道には行くの?」
「そりゃデバフ耐性を獲得したいから行くけど」
「まだ状態異常回復は覚えられないんだよねぇ」
二人はあんまり乗り気じゃなさそう。もうちょっとノース街道でレベリングに勤しむつもりらしい。
僕はそろそろサウス街道に挑戦するかなぁ。早くプレゼント渡したいし。
「なんだ? モモはサウス街道に用があんのか?」
「うん。チェリー花っていうの、採りたいんだよね」
改めてミッションのことを説明したら、リリが「じゃあ、一緒にちょこっと行ってみようか」と言ってくれた。
「状態異常くらっても、誰かが動ければカバーできそうだしな。そのチェリー花を採るだけなら、すぐに街に帰れるだろ」
……この二人、優しすぎでは?
「ほんとにいいの?」
「いいよー。結局今回あんまり回復薬使ってないし、多少時間かかっても死に戻りはしないでしょ」
「まだ時間の余裕はありそうだしな」
ということで、ノース街道から帰ったら、サウス街道に行ってみることになった。
「ありがとう!」
「気にしないで。それより、もう採掘ポイントなさそうだけど、奥に進むの?」
ありゃ、気づいたら掘れるとこなくなってた。
三人で顔を見合わせてから、肩をすくめる。
「早速南に行くか」
「そうだね。私が持ってる松明も、そろそろ限界が近そうだし」
「それはヤバい。……帰るときは瞬間移動できればいいのにねぇ」
サウス街道は、街を挟んで反対側なので、移動が面倒くさい。途中でモンスター倒したらアイテムと経験値もらえるとはいえ、ね。
「どっかでそういうスキル出てきそうだよな。今んとこ、風魔術で
洞窟の外に向かいながら話す。
でも、
「転移するのは複合魔術とかじゃない? 基礎の五属性と光闇のどれかを組み合わせた感じで」
「随分と先が長そうだな……」
リリの発言は一理ある。というか、それ以外で入手できる方法が思い当たらない。もしかしたら、どこかで転移を覚えるためのミッションがあるのかもしれないけど。
◇
話しながらバトルしつつ街まで帰って、南門に到着。
ノース街道のプレイヤーが少なくなってたから、予想以上にバトルがあったせいで時間と体力を使っちゃった。回復薬が活躍したよ。
「プレイヤーって多すぎても少なすぎてもダメなんだね」
リリがため息。僕も心底「だよねー」と同意した。
混雑はイヤだけど、モンスターとの連戦も遠慮したいのです。わがままかな?
「モンスターが湧く速度の調整が難しいんだろ。その辺、このゲームは改良の余地があるよな」
ちょっぴり大人なことを言うルトを先頭にして、サウス街道に突入。
サウス街道は草原に一本の街道が伸びてるエリアらしい。花が咲き乱れてて、結構綺麗。モンスターがいなければ、ピクニックに良さそうな景観なんだけど。
こっちもプレイヤーはいるけど、ノース街道より少ない。そのせいで、すぐにモンスターにみつかっちゃった。
大きな赤い花と、ヘビみたいな蔦がたくさん合わさった感じのモンスター。
物理耐性はなさそうだけど……。
——————
【
木属性のモンスター。麻痺効果のある花粉と、鞭のような蔦を使って攻撃してくる。得意属性【土】苦手属性【火】
——————
いきなりデバフ系モンスターだよ。でも、花粉?
「このモンスター、花粉に麻痺効果があるらしいから、触れないように気をつけて!」
とりあえず二人に教える。ルトは攻めあぐねてるみたい。麻痺は嫌だよね。耐性はほしいけど。
それに対して、疑問を解消するべく水魔術を放つ。
「——
飛んでいった
「えっ、そういう感じで対策できるんだ?」
「思いついたから、やってみた」
驚くリリにサムズアップ。発想の勝利です。
「麻痺攻撃がねぇなら、近づいても問題はなさそうだな!」
ルトが剣術で攻撃。ゴーレムに対してとは違って、効果は高そう。満足そうで良いことです。
「——あ、ちょっと痺れてる……?」
「攻撃した瞬間に、衝撃で花粉が出てたからかも」
すぐに顔を顰めて飛び退いたルトに、リリが教えてた。
なるほど。衝撃を与えたら花粉が放たれるのか……。それは厄介かも。遠距離攻撃がベスト?
「それじゃあ、火魔術で攻撃した方がいいのか」
結構体力を削れたみたいだけど、思ったほどじゃなかったな。……あ、水魔術の後だから? 火と水って、どっちが先でも続けて使ったら効果を減退させるのか。これは調べ損ねてたなぁ。
「——それなら、火魔術の連続攻撃だー」
僕が
ルトが麻痺して動けなくなってる間に、
そういえば、僕、
そんな感じで戦ってたら、いつの間にか勝利! デバフさえどうにかできれば、ノース街道のモンスターより倒す時間が短くて済むみたい。
「【痺れ花粉】ゲットしたよ。これ、状態異常回復用の薬に使えないかな?」
「可能性はあるな。……というか掲示板に情報が出てた。薬士なら調合できるけど、レベルが低いと成功率が30%以下らしい」
「それは残念」
錬金術でもまだ薬は作れないし。やっぱり錬金術士のミッションをクリアさせてレベルを上げないとなー。
「それより、モモ! このピンクの花は探してるやつとは違うの?」
リリが近くの草原に生えてる花を指差す。どれどれ——?
——————
【チェリー花】レア度☆
淡いピンクの花弁が特徴的な花。薬効はないが、美しく儚い見た目から女性に好まれる。
——————
「これだよ! すぐみつかって良かった!」
バトル一戦しかしてないよ。こんなにすぐみつかるなら、一人でさっさと来ても大丈夫だったかも?
「ラッキーだったね」
「んじゃ、帰るか。バトルより移動に疲れた」
肩をぶん回しながらルトがぼやく。
微笑んでくれてるリリを見習ってほしいなぁ。でも、そういうところはルトらしい感じもするし、嫌いじゃない。
「二人とも、僕に付き合ってくれてありがとう!」
全身で喜びを表すように跳びはねて感謝を伝えたら、二人とも微笑んで頷いてくれた。やっぱり優しいね。
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◯NEWアイテム
【黒曜石】レア度☆
透明感のある黒い石。生産用アイテム。
【痺れ花粉】レア度☆
特定のモンスターから入手できる痺れる花粉。生産用アイテム。モンスターに投げつけると、短時間麻痺状態にすることもできる。
【チェリー花】レア度☆
淡いピンクの花弁が特徴的な花。薬効はないが、美しく儚い見た目から女性に好まれる。
◯NEWモンスター
【
木属性のモンスター。麻痺効果のある花粉と、鞭のような蔦を使って攻撃してくる。得意属性【土】苦手属性【火】
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