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「昨日、水瀬くんとどんなお話ししたの?」
お昼の時間に姉の雪が言った。
「秘密」
雪の作ってくれた(雨もちょっとだけ手伝った)美味しいお昼ご飯を食べながら雨は言った。
お父さんは食卓にいない。
お父さんはまだ仕事中で、遠野神社の本殿にいる。
それは珍しいことではない。
雨と雪は、二人で食卓に座って、おしゃべりをしながらお昼ご飯を食べている。
「うまくいっているの?」
焼いた魚を上手に食べながら、雪が言う。
「まあ、まあ、かな?」
甘い卵焼きを食べながら雨が言う。
「よかったじゃん」
「うん。よかった」
雨はお味噌汁を飲む。
「美味しい」
「当たり前でしょ?」にっこりと笑って雪は言う。
「ねえ、お姉ちゃん」
「なに?」
雪は雨を見る。
「お姉ちゃんはさ、誰を本気で好きになったことってある?」
雨も雪を見る。
「誰かを本気で?」
「うん。本気で」
雨はじっと雪を見る。
雪は、「うーん、そうだな?」とわざとらしく、手を顎に当てて、考えるふりをした。
「まあ、一応、あるかな?」ちょっと恥ずかしそうな顔で雪は雨にそう言った。
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