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……好きだよ。君のことが、大好き。
その日は、朝からずっと雨だった。
遠野雨は自分の通っている中学校の三の一のプレートのある、自分の教室の窓際の席のところから、ずっと降っている(自分と同じ名前の)雨の降る風景をただぼんやりと眺めていた。
「天体観測?」
雨は言った。
「そう。天体観測。五月の連休にさ、みんなで行こうよ」
雨の席の前で、すごく楽しそうな顔で辻野瞳はそう言った。
「天体観測って、誰と行くの?」
「私と、雨と愛と、それから天文部の森川くんと、その友達でこちらも天文部の東山くんと、……それから、最後に水瀬くん」
「え?」
水瀬くんの名前が出たので、雨はびっくりして瞳を見る。
瞳は雨がそんな態度を取ることが事前にわかっていたのか、そんな雨を見てにっこりと意地悪な顔で笑った。
「水瀬くんが来るなら、雨もくるよね?」
瞳は言う。
「……うん」
雨は言う。
本当はいかない、と言ってやりたかったけど、水瀬くんと一緒に天体観測に出かけることができるのは、確かにすごく魅力的だった。
「あ、でも瞳。それってさ、もうみんなに了解とってあるの?」
雨は言う。
「もちろん、これからだよ」
瞳は言う。
がらっと教室のドアが開いて、そこから愛が教室の中に入ってくる。
そんな愛の姿を見て、「あ、愛! ちょっと話があるんだけどさ」と言って、瞳は雨の机の前から離れていく。
そんな軽快な動きで楽しそうに教室の中を移動する瞳の後ろ姿を見て、雨は大丈夫かな? とそのイベントのことが、なんだか少し不安になった。
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