第40話 セイレンさんと話した ティーナ目線

お仕事頑張って費用がたまったので、台所を改造した。ギルドに紹介してもらった職人さんが丁寧に仕上げてくれた。


出来上がりの確認をかねてドリンクを作った。職人さんたちはサリーさんと垣根越しで、しゃべりながら待っていたが、


「とても使いやすいです。ありがとう。中でドリンクを飲んで下さい」と言うとサリーさんと顔を見合わせて喜んだ。


「ご馳走になります」と職人さんが言うとサリーさんが


「わたしもよろしいかしら、台所を見たいわ」とやって来た。


ドリンクを飲んでもらっている間にサリーさんはカップを片手に、細かくみて、褒めてくれた。


「話しには聞いてましたが、これはいいですね。毎日ここに飲みに来たいけど、ちょっと遠いからな」と言って職人さんは残念そうに帰って行った。


そろそろ、瓶詰販売を考えよう。パメラに相談だ。




◇◇◇


「ティーナ、あんたの亭主ってもしかしたら公爵かい」


「よくわかったね。さすがセイレンさん」と答えると


「なんでも、潰されたみたいだよ。王都ですごいうわさになっている」



「へーーーろくでなしの尻尾野郎はぺっちゃんこ!!!やったね・・・・誰がやったんだろ。ぺっちゃんこにするポーションとか・・・・」


「なに言ってるんだい。公爵は生きてるよ。公爵家が潰された。建物って意味じゃないよ。全くあんたと来たら・・・賢いのか、馬鹿なのか。ご本人はノーステラの侵略を抑えに行ってるよ。あのお方がいなけりゃこの国はとっくに滅びてるよ」


「まぁ遠くにいるんならそれでいいや」と答えたら


「ティーナ、よくお聞き。あんたの亭主だけどあんたを大事に思ってるのは間違いない。わかるんだよ。男だけは一杯見てきたからね」


「大事に思ってるのに給料取り上げる?」


「それはあの家のやつらが、クズだったからだ。あんたの亭主はそれに気づかずにあんたを頼んで出かけたんだ。


ティーナはご亭主を最初に見た時どう思った?」


「素敵だと思った。フワっと優しいと思った」


「もっと、細かく話しておくれ」セイレンさんがこころなしか嬉しそうに言うので


「うーーんとね、まだ顔がないって思った。えーーと。こうやって見上げたけど、顎の先だった。だから、まだか?って。で頑張って見上げたら顔があって、好きな顔だった。これからこの顔を見上げるのは、いいなって思った。」


「相手は、ティーナのことをどう言った?」


「好きって。顔がいい男から好きって言われてうれしかった」


「そのまま、邪魔がなきゃ、今頃はもっと相手を好きになってたはずだ」


「そうかな?今、亭主の事を考えると腹立つけど・・・・」と答えると


「そうかい。腹が立ったら怒りをぶつければいい。向こうはそれを喜ぶ」とセイレンさんは笑いそれから

「あんたの金を盗ったやつらは厳しいバツを受けてるよ。それを見たいかい?」と真面目な顔で言った。


「うーーーん、いいかな。てか見てもわからないし・・・・会った事も見た事もない人だから」


「そうかい、ティーナが気にする価値のあるやつらじゃないしね」とセイレンさんがうなづきながら言って

「辛かった事はどうだい」と少し心配そうに聞いてきた。


「おなかが空いた事か・・・・孤児院も貧しくてあまりたまにご飯がなかったりしたから・・・孤児院みたいだって思ってた。貴族だからって人の稼ぎ、掠めてドレス作ってると思ったら悔しくて・・・・稼いでいるわたしがおなかすかせているのに、あいつらはおなかがすいて悲しいなんて思いも知らないでドレスで着飾っていると思うと悔しくて・・・・おなかがすいて悲しくなれって思ってた。食べても食べてもおなかが空けばいいって思ってた。うーーんと今でも思ってる。ずっと飢えてろって・・・・」と答えると


「ほんとにやつらがそうなれば、痛快だね」とセイレンさんも大いにうなづいてくれた


「うん」と言うと


「そういえば、潰れるポーションとかおもしろいこと言ったね。そうだとすれば腹ぺこポーションとかいいね」


「ほんとだ。セイレンさん」


「冗談はともかく、今度ご亭主が現れたら、よく話を聞いて。それでも気に食わないときは、そうだね。ここに連れといで。しつけをしてやるから」とセイレンさんは笑った。


「そうだよね。顔をみたらいろんな事思い出して、がーーってなって、王命なんて・・・・くそくらえって頭に血が登った。逃げ出さずに一杯文句言えばよかった。会って文句言ってやりたい・・・・会いたくなった」と言いながらちょっと情けないと思ったが


「それが良いよ。思い切り罵ればいいし・・・・・それを受け止められない男はクズだからね」とセイレンさんが言った。

不思議なことに言葉は勇ましいのに、セイレンさんはちょっと悲しそうだった。



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