第30話 ティーナは順調。一方・・・

冒険者ギルドから使いが来た。あのイケメンさんだ。都合のいい時に来て欲しいんだって。


まぁいいでしょうとお店を閉めて出かけた。


依頼は美肌ポーションを作って欲しいと言うものだ。代金も充分だ。瓶と材料をそえて依頼が来たというので、すぐに作ることにした。


久しぶりのポーション作りは楽しかった。あの二人がいなければ今でもあそこでポーションを作っていたのにと怒りが沸いたが、すぐに押さえた。すぐに鍋を宥めるために、やさしくゆすった。それから静かに見守った。


余った材料は貰っていいと言う事なので、ありがたく頂戴した。


見ていたら、ポーションはすべてギルドの外に運び出されていた。



店に戻る途中で、あの初心者さんたちに会った。



「これから店に戻りますか?」と聞かれたので


「うん」と答える。


「よかった。今日も飲める」


「そう、すれ違わなくてよかった」と思った。


それから、ドリンクの感想を聞きながら店に戻った。





◇◇◇ 王太子目線


第二王子を虐めるのにも飽きたので、レッド公爵家の方を片付けることにした。ジルはうっとうしいので、北の大国ノーステラ帝国に喧嘩をふっかけに行かせた。総大将は第二王子のウィリアムだ。


皇太子のツーチャンから手紙が矢継ぎ早に届く。ジルにあげたい町があるんだよ。我慢して。


さて虫を封印して二週間だ。


ハメル邸は出入りこそさせなかったが、普通の生活がおくれるように気を配った。衣食住すべてにおいてだ。そして美肌ポーションの瓶を使用人の末に至るまで配っておいた。



レッド邸には、パンと脂身の多い肉を配達したのみだ。



俺はハメル邸を訪ねた。



「おそくなってすまない。もう安心だ。レッド邸まで送っていこう」俺の名前で品物を配達していたので、好意的だった。封鎖したのは俺だけど・・・・



レッド邸に入った彼らは驚いたようだ。


久しぶりの家族、一族の心あたたまる団欒となると思ったが、ハメル邸にいたやつらは匂いに顔をしかめてなにも言えなかった。



「なぜだ。なぜおまえたちはそんなにつやつやなんだ?」とか言ってる。疑問形だけど詰ってるよね。ティーナの美肌ポーションの効果はすごいからな・・・


「・・・・あの、どうしてそんな状態なのですか?お風呂は?」と恐る恐る聞いているぞ・・・・聞きたくなる匂いだもんな。


「マリールイーズ様でらっしゃいますよね・・・・・貴婦人はどの状態でも・・・背筋を伸ばすと・・・」マリールイーズは自分こそ、社交界の花形だと称していたし、実家の女たちに意地悪してたからな。ほらお前、もうちょっと頑張って皮肉とかイヤミとか言ってみろ・・・ほれほれ・・・


「みなさま、なにがありましたの?どうなさったんですか?」とハメル家党首が聞いている。やっと最初の衝撃から立ち直ったな!


「お前たちは裏切ったんだ」と言っているのは・・・誰だっけ?


「いえ、わたくしたちは閉じ込められていても貴族の矜持を守り、節度ある暮らしをしておりましたが・・・・」とハメル家党首が答えている。残念だけどね、置かれていた状況が違ってるんだよ。


「そうです。終日家のなかで過ごすよう強制されましたが、助け合い、励ましあいました」とハメル家のものが援護する。


「左様です。不自由ななかで貴族として恥ずかしくない様努めました。それを裏切りなどと・・・」







「おい、こいつらが臭い。水をかけてきれいにしろ」と俺が言うと


「外に出しますね」と冒険者が答えた。うなづくとすごーーーく、嫌そうに指先で、マリールイーズの服の端をつまみ、もう片方にどこかの夫人をつまむと外に出て行った。



それを見て他の冒険者は


「自分で出てくれますか?」と一同に向かって言った。


レッド邸に元からいた者は、よろよろ歩いて去って行った。


残ったハメル家の者たちは、


「ジルフォード様が乱心というのは嘘だったのでは?」


「どこからそんなうわさを?」と聞くと


「はい、殿下。それが、マリールイーズ様です。お母様が言う言葉ですので、信じました。が」と困惑している。


「ジルフォードは今、ノーステラ帝国の暴挙に対応する為にあちらへ行っているが・・・だいたい、公爵本人を廃嫡するとか・・・・頭は確かか?できるわけないだろう。逆ならまだしも」

ここで言葉を切って首を傾げると

「息子を貶めるとは、なにをしたいんだろうな?」と言った。

ハメル家のものはお互いに顔を見合わせていたが、小声でひそひそ話している。



「そろそろ洗い終わって戻って来ますね。みなさんの愛情で彼らを正してあげて下さい」とハメル家のものに言い、使用人に向かって

「ハメル家の使用人はここで主人と別れてくれ。次を紹介するので馬車で待っているように」と彼らを部屋から出した。



それから、洗い終わって帰って来た者に向かって


「お茶会のお客様が巻き込まれていたそうで、把握が遅れてすまなかった。自宅まで送るので申し出てくれ」


彼女たちを隊長の一人が馬車に案内した。





「レッド家の皆様、当主はフレデリック殿で届けを出しておられますね。受諾されました。フレデリックおめでとう。この困難を乗り越えることを祈る。あっそれから第二王子の迷いはノーステラに行く前にジルが親身に諭しておったぞ。お前らは不本意だろうが、王太子は引き続き俺だ」


「それは・・・」「そうではないんです」「我々は・・」と声がしたが、無視して


「では、わたしは失礼する。支援を続けたいが公爵夫人から盗みをした上に、公爵位を盗もうとし、果ては王太子のすげ替えを企んだおまえたちを庇うのは、いくらわたしでも難しい・・・・努力はするが・・・・許せ・・・」



俺はそう言うと護衛に取り囲まれて屋敷を出た。



その夜、第二王子の夢に入った。夢のなかで俺はやつが立派な犬になれるように鍛えてやった。


お座り、ワンと鳴くこと、月に向かって吠えること、トイレは片足を上げてと指導するとクンクン泣いて面倒になった。


あいつは立派な犬になれないやつだ・・・・

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