第23話 毛生え薬その後 ギルドマスター目線
ティーナが残して行った毛生え薬を俺たちはじっと見つめていた。
それからお互いを見た。目線を少し上げると頭を見る。お互いの頭を・・・・
「「試そう。死ぬことはない」」
「そうだな」「そうだ。すぐに抜けても本望だ」
「飲むか、塗るか」「塗るか、飲むか」
二人共塗るだけを選んだ。
『勇気をだして飲めよ』と思ったが、黙っていた。「おまえこそ」と返されたらいやだからな。
真面目な顔でそれぞれが、頭にたっぷりと塗った。
翌日、生えていた。伸びていた。あの魔物と同じ反応だ。
嬉しいが、不自然だよな。ちょぼちょぼと短い髪があった所に、いきなり長い髪がたっぷりと・・・・
薄めたのを少し塗ればよかったのかな・・・・全盛期に、いやそれ以上になったのに、嬉しくない。
そこに来客があった。
こちらから連絡するまで面会謝絶と厳しく言い渡していたのに、なんだろう。
「あの、ご命令は承知しておりますが・・・あの新任の・・」と職員が言い澱んでいると、
「職員を叱らないで下さい。あっ君は下がっていいよ」と声がして、
「開けますよ」とドアが開いた。
「はじめまして、ギルド相談課課長のサミエル・ページです。新設された役所で王太子殿下直属の風通しのいい組織です。すぐに意見が殿下まで通ります。存分にご利用下さい。もちろんこのわたくしも使ってやって下さい」
「はじめまして、王宮薬師のウェンズ・ライトと申します。研究が主な業務です。特に投薬後の被検体の状態の観察と分析を得意としております」
「「よろしく・・・・」」
「適当に手に取って手の平でペチペチと頭につけた。すり込むのではなく軽くペチペチしたんですね」
ページの野郎が手を上げた。ライトがうなづくと
「その場合手の平についた毛生え薬が効いて手の平に毛が生えるってことは?」
「いい質問です。手の平に毛は生えないようになってます。猫の足の裏を思い浮かべて下さい」
「わかりました」
「続けます。塗ったのは一昨日の夕方、そして昨日の昼過ぎにいきなり毛が生えたんですね」
「はい、いきなり目の前に簾が・・・・それが髪でした」
「そちらは、目を塞がれたと思ったで間違いないですか?」
「はい」
こいつに根掘り葉掘りされて答えた事を完結にまとめた書類をみながら、間違いがないか改めて答えている。
報告書はすぐにあの金髪の手元に届くだろう。
「
あぁあの金髪をむしりたい。
俺たちの髪は四日目にごそっと抜けた。
俺たちを目にしたページとライトは腰を抜かさんばかりに驚いた。脅かしたのはうれしいが・・・・
そんなにびっくりしなくていいだろうが・・・・傷つくだろ・・・・
毛が抜けた後、残ったちょぼちょぼは最初と変わらないと本人、職員が証言して報告書は完成した。
それを読みあげるライトの髪に夕日が差している。夕日を浴びて赤みを増したあいつの毛を引き毟りたい・・・・
なお、残った毛生え薬は回収された。
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