第44話 力と顕現

『こうして見ると、何らかの力を持っている物って、それなりにあるんだね。』

怪しい気配を探して、薄暗い会場の中を歩き回っていると、気が付いてしまう。


『ええ。ここはそういうのが集まりやすい場所のようにも思うけれど・・・ほとんどの人間が魔法を使えない世界と言いながら、自然と影響を受けたり、あるいは行使していたりするんじゃないかしら。』

『そうだね・・・うららさん達が使う力も、この国の文化とかを知らない人が見たら、魔法と呼ぶかもしれないし。』

そういう私もルルに出会うまでは、超常の力みたいなものに縁が無かったからなあ・・・きっかけさえあれば目覚める人が多くいても、おかしくはないのかもしれない。


『あら、あの辺に小さな力が集まっているわ。』

『うん? もしかして何か異変・・・って、水晶とか売ってるのかあ。』

パワーストーンといった言葉はよく聞くほうだし、こういうイベントでお店に出す人も多そうだよね。


『ああ、その思念を封じてるのも、同じ種類の魔石だったわよね。』

『うん、そうだよ・・・って、ルルから見れば魔石になるのか。』

ルルと一緒にシオンのいる水晶を見つめれば、返事をするようにびりびりと刺激が伝わってくる。


『今のシオリなら、ああいうのに込められた力に合わせて、それの入れ物を替えることも出来そうよね。』

『えっ・・・? あっ、そうか。ミアをお札から出す時と同じやり方で・・・』

もし私に出来ることが増えたら、宝石に魔術付与エンチャントして、状況に合わせてシオンの外殻を切り替えられるのかな・・・パワータイプとかスピードタイプとか、いっそのことシオン Ver.2.3.1a とかね!


・・・え、嫌? ごめんね、私の頭がまた暴走しただけだから、そんなにびりびりしなくてもいいんだよ。



『・・・またよく分からないことを考えているようだけど、探すべきものはまだ見付かっていないわよね。』

『うっ・・・確かにそうだね。』


『大体、その怪しい人間とやらはどこにいるのよ。そこまで危ないやつなら、すぐに分かりそうなものじゃないの?』

『ああ、主催者の一人だってうららさんが言ってたから・・・スタッフさんらしき人は所々にいるけど、偉い人は別の場所から全体を見たり、指示を出したりするんじゃないかなあ。』


『そういうことなら、そちらも探すべきではなくて?』

『ごもっともです・・・』

ルル先生の助言に従って、薄暗い売り場の外に出て、会場の地図を確認・・・あれ? ほんのりと何かを感じるよ? なんというか、もやっとしたものを。


『ねえ、ルル・・・』

『ええ。最初からこんな状態なら、来る時に気付いてもおかしくはないけれど・・・』


『イベントが始まった頃には、こんな気配は存在していなかった・・・だけど今は違う。つまり・・・!』

『ここの人間達とか、並んでいる物から何か吸収しているのかしらね。』

『だよねえ! これは放置したら本気で危ないやつだ!』

慌ててその出元を探すと、『関係者以外立入禁止』の貼り紙の先・・・! イベントなら仕方ないか・・・だけど!


『こんな時のために、練習してきたことがあるもんね。ルル、準備はいい?』

『いいけど、何をそんなに楽しそうにしてるのよ。』

『まあまあ、その辺りは気にしないで。お願い、ミア!』

取り出したお札から、妖精の力を込めた手で内に眠るものを喚び出す。すかさずルルが魔法をかければ、ステルス式神となったミアが顕現した。


『ミア、この先にある怪しい魔力を探って!』

『~~!』

にゃあと一鳴きして、姿を消したミアが立ち入り禁止の向こう側へと走ってゆく。


『うんうん、やっぱりこういうのって、いいよね。』

『・・・シオリ、随分と楽しんでいるようね。』


『あ、あはは・・・ごめん。人間って・・・主語を大きくしすぎたけど、こういうのに弱い人は結構いるんだよ。』

『それが人間の性だというなら仕方ないけれど、随分と曖昧な指示じゃない? 探った後はどうするのかしら。敵に遭遇した時は戦うのと逃げるの、どちらにするのかしら。』


『・・・・・・私、まずいことやっちゃいました。』

『言っている場合かしら?』

あっ、ミアが向かった先から悲鳴が聞こえてきた。これは本当にまずいようだ。

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