風になる/点描の唄

@kdvdudvdm

風になる p1's side

高校二年生になった春。


クラスに転校生がやってきた。


「初めまして。夏休みが終わるまでの間、

お世話になります。」


ひどく透き通ったその声に顔を上げると、

女の子がひとり、教卓の前に立っていた。


一度目があったあと、また顔を伏せる。


遠くからやってきてたった5ヶ月で会えなくなるというその子を、僕は気にせずにはいられなかった。



1週間が経って、クラスから

転校生がきた騒がしさは薄れていた。


僕はまだ彼女が気になっていた。


綺麗な髪に、青色のリボンが揺れている。


「花火大会、一緒に行こう」


気がつけば声をかけていた。


言ってからでは遅いが今は4月。

どう考えても季節外れの誘いだった。


「…いいよ」


少し遅れて、今度は初めて会ったときよりも近くから、また透き通った声に顔を上げる。


それまで退屈そうにため息をついていた彼女が、今は楽しそうにみえて嬉しかった。


「他にも、いろんな場所に行こう」



5月。

桜が散り、今は暖かな風が吹いていた。


今日は坂道を登った先で彼女と海をみる。


「行ってきます」


僕は自転車に乗って走り出した。


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