無実の証明5
ヨハンに続いて広間に入って来たのは、ジェラルドだった。
「叔父上……今、視察で領地を離れているのでは……?」
エドモンドが痛みに顔を歪めながら呟いた。ジェラルドは、エドモンドの側にしゃがみ込むと、微かに笑みを浮かべて言った。
「ヨハン・バルトから、マティアス達が今日しようとしている事を聞いて、なんか面白そうだなと思ってさ。早めに切り上げて来たんだよ。……ところで、この状況、お前がマティアスを殺害しようとしていたように見えるんだが、どういうわけ?」
「……ヴァンパイアなんかが叔父上の側にいる事が、許せなかっただけですよ」
「……まあ、わからないでもないけどな。ヴァンパイアが平民を襲う事件が実際にあったし。襲ったのはバルト一族じゃないが。……それどころか、バルト一家はそのヴァンパイアを捕まえるのに協力してたんだぞ。おかげで犯人は捕まり、処刑になった」
「……そんな話、聞いていません」
「バルト一家は、なるべく目立ちたくないようだったからな。内密にしてたんだ」
エドモンドは、ジェラルドを追い落とす為にマティアスと殺そうとしたのではない。むしろ、ジェラルドを尊敬しているが故に、ヴァンパイアであるマティアスがジェラルドの側にいる事が許せなかったのだ。
十一年前、ヴァンパイアが平民を次々と襲う事件があったから。犠牲者となった平民の中に、エドモンドが密かに仲良くなっていた女の子がいたから。だから、マティアスが十一年前の事件の犯人ではないとわかっていても、エドモンドはマティアスを信用する事ができなかった。
「マティアス様!」
ガブリエラが、広間に駆け込んできた。今マティアスは、床に横になってヨハンの手当てを受けているが、まだ腹部から血が流れている。ヨハンは、自分の腕をナイフで切ってマティアスに血を飲ませた。
「ガブリエラ……聖女は、どうなった……?」
「アンジェリカ様は、会場の皆が避難してそんなに時間が経たない内に、衛兵に連行されました。自宅を捜索した結果、アンジェリカ様が麻薬を使ったり、子爵を殺害した事が公に認められたようです。……ちなみに、アンジェリカ様は捕まりそうになった時逃走しようとしましたが、リディオさんが確保していました」
アンジェリカは、連行される際、「私は幸せになりたかっただけよ!」と叫んでいたという。
「……そうか。……良かったな、お前の無実が証明出来て……」
マティアスは微笑んでそう言うと、意識を失った。
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