1183 眞子の持つ能力の証明

 奈緒さんが眞子にアレンジを依頼した理由は「今までに一度もアレンジを没にされた事が無い」っと言う事実を踏まえての話だった。

そして更に、それを証明する為に……


***


「それについては。この間、骸のジムさんと『蟹鍋』した日よ。あの日、眞子が、エリアスの『骸カスタムのベース』を平然と弾いた時に、まずは直感的にそう思ったのよ」

「あぁ、そこかぁ。確かに、あれは衝撃的だったもんね」

「でしょ。それに付け加えて、眞子が再現した『ホランドがベースを弾いたら』ってジムさんが出した課題。それをこの子、あの難題すらもアッサリ再現したでしょ。そこで更に、この子の『汎用性の高さ』に気付かされたのよ」


奈緒ネェは、そう言いながら、ズッと私の頭を撫でてくれてるんだけど。


なんか豪く褒められてるね。


けど、これって本当に、そんなに凄い事なのかなぁ?

あんまり意識してなかったから、どうしても自覚が産まれてこないなぁ。



「なるほどなぁ。それは、確信に至っても、おかしくはない証拠だな」

「そぉ。だから私は、その日の内に、以前、眞子がアレンジした曲を、再度、全て洗い直したの。……そしたら『1度も没に成ってない』って驚愕の事実が浮かび上がってきた訳。これが私の言う確証って奴ね」


えっ?ちょ……奈緒ネェ。

わざわざ、そんな事まで調べてくれてたんですか?

そこまで徹底的に調べてくれてたなんて、全然知らなかったよ。


なんか……ごめんなさいだね。


でも、一言ぐらい声を掛けてくれれば、私もお手伝いしたのに……自分の事だし。



「ほぉ~~~、流石に奈緒は勤勉だな。それに不確定な事には一切確証を持たない姿勢。大した執念だ」

「まぁ、自分のバンドの行く末を考えれば、多少は、こう言う面倒な作業もせざるを得ないよね。それに、不確定を確信に変える事は最重要事項だからね。……まぁただ、この事実を知った時は、流石に、凄く口惜しい想いをさせられたのも事実なんだけどね」

「だろうな。普通では、曲のアレンジで『没なし』なんて事は絶対的に有り得ない所業だからな。……しかしまぁ、眞子には驚かされっ放しだな」

「そうね。此処まで汎用性が高いと、なんとも言い難い心境に成るね」


あの……無意識とは言え、なんか、ごめんなさい。


でも、本当に、そんなの全然知らなかったんですよ。



「まぁ、エリがそう言いたい気持ちも解らなくもないけど、それはしょうがないだろ。だって鞍馬の持ってる才能は、此処に居る全員が惚れ込む様な才能だからね。多少、羨む点が有っても、おかしくはでしょ。……けど、妬みを持っても、その有用性は、なにも変わらないじゃないの?」

「そうだね。ホント、喉から手が出る様な羨ましい才能だけど。ただ才能って言っても、実際は努力の賜物なんだし、羨んでばかりも居られないか。凡人は凡人なりに、自分の技を磨くのが一番だね」

「そぉそぉ、そう言う事。無い物強請りは無い方向で。まずは頼れるものは、出来る人に頼れば良いんだよ」


いや、あの、私は……その『ただの凡人』の代表なんですけど。

それに崇秀さんの様に、ちゃんと目標を持って、それを狙ってやっていた訳でもないですし。

ただ単に、人の真似ばっかりしてたから、ベースの弾き方が、人と比べて変に成っちゃっただけなんですから。


偶然の産物なんですよ。



「あの……奈緒ネェ。でも、それってね。ただの偶然の産物だと思うよ。私、これでも、いつも必至に考えてアレンジしてるんだよ。私は、そんな天才肌の人間じゃないよ」

「そうなんだ。じゃあ、それで良いじゃない」

「えっ?」

「だって私は、アンタが捏ねるから、事実を突きつけただけの話だもん。だから本音を言えば、アンタが天才だろうが、凡才だろうが関係ないの。アンタが積み上げて来た実績が、そう語ってるだけの話なんだからさ」

「あっ……」

「……って言う事だから、アレンジやれ。今後、ゴチャゴチャ文句言わずアレンジやれ」


そうかぁ。


無意識で有ろうと、無かろうと。

事実は、事実として、キッチリと実績として残ってるからこその依頼。

それを奈緒ネェ達が自己判断をしてくれた上で、私なんかのアレンジを評価してくれたんだね。


そうやって頼ってくれるなら、私は……



「あの、じゃあ、微力ながら、お手伝いさせて下さい。一生懸命頑張らさせて貰いますから」

「キタキタ!!ヤッパ鞍馬は、そうでなくっちゃね。じゃあ私は、早速スタンバっとくね」

「あぁ、はい。まずは1度、ジックリ曲を聞かせて下さい」

「はいはい。お任せあれ」

「じゃあ、それで決定だな。……では、私達も準備するとするか、エド」

「ですね。鞍馬が驚く様な演奏を一丁かましたりますか」

「はい。宜しくお願いします」

「オーライ。シッカリ聞いててよ」


そう言って、エリアスさん、ホランドさん、エディさんのお3人さんはステージに戻って行く。


そして最後に奈緒ネェが……



「じゃあ、シッカリ頼むわよ、眞子。……デクも、アンタが、必ずやってくれるものだと信じて、コチラに来なかったんだからさ」

「えっ?そうなんですか?」


寝てたんじゃないんですね。


それどころか、私なんかを信頼してくれてたんだ。



「そぉだよ。それにアンタが、多少、駄々を捏ねるのも想定してたみたいだよ」

「……そうですか。ディックさんが来ないなんて、最初から、なんか変だとは思ってたんですけど、そう言う理由だったんですね」

「だね。じゃなきゃ。あの音楽にだけは五月蝿いデクが、黙ってるなんて変だと思わない方が、どうかしてるでしょ」

「ですね」

「……でもデクは、それだけアンタの腕を評価してるって事の裏返しでもあるんだよ。だから、それに応えれる様なアレンジをキッチリしてみせなさい」


ディックさん、そこまで私を信じてくれてたんだね。


なのに、私は1人で駄々を捏ねて……馬鹿みたい。


期待してくれる人が、例え1人でも居るなら、全力でやるのがミュージシャンの勤めってものなのにね。


ホント……馬鹿みたい。



「あぁ、はい!!出来る限りやってみます!!いえ、やってみせます!!」

「そぉそぉ。眞子は、それで良いんだよ。失敗なんか恐れてても、なにも起こらないんだからさ。ミスなんか、何度でもすりゃ良いんだよ」

「本当ですね。……でも、失敗しない様に頑張りますね。じゃなきゃ、奈緒ネェが調べてくれた、私の連勝記録が途絶えちゃいますもんね。まだまだ失敗しませんよ」

「言う言う」


調子に乗ってますね。


すみません。


でも期待に添えれる様に頑張ります!!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


 奈緒さんによる、眞子の才能に関する証明はお仕舞。

こういう事実があるだけに、奈緒さんは眞子のアレンジを申し出てたんですね。


しかしまぁ奈緒さん、相変わらず、なにをするにしても徹底してますね(笑)


っとまぁ、そんな感じで眞子も納得せざるを得ない状況に成りましたので。

早速、新曲のアレンジに移って行きたいと思うのですが。


そう上手く行くのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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