14〈次に桜乃の姿を見たのは〉

 達巳が次に桜乃の姿を見たのは、テレビの画面の中であった。


 事件から五年後、高校生となった達巳は、沢渡からの「桜乃さんがドラマ出てる」と言う連絡を受けてすぐにそれを視聴した。


 画面に映る桜乃は記憶よりも大人びていたが、その特徴的な困り眉は昔のまま残っていた。ヒロインの下の妹という役柄で、出演は僅か二話と多いものでは無かった。しかしそのドラマ自体がそこそこ話題になっていたこともあり多くの人の目に留まったのか、また別のドラマ、あるいは映画等で少しずつその姿を見ることとなった。


 役者としての彼女の評価はいわゆるは憑依型のカメレオン女優であり、演じる役柄によって全く別の顔になる。かつての白雪姫で見せたものよりもはるかに進化した演技力で、時には主役を食ってしまうことすらあった。


 それからさらに三年が経過した。東京の私立大学に入学した達巳は、人混みを縫って早足で夜の街を歩いていた。


「……仕方ねぇだろ、休講だって勘違いしてバイトの面接入れちまったんだから……。一回や二回出なくたって落としゃしねーよ」


 そのような独り言を小声で言いつつ、達巳は進む。ふと足を止めて見上げたビルの巨大スクリーンには、桜乃の姿が大きく映し出されていた。


「最優秀助演女優賞を受賞された桜乃真希さんが……」


 そのように紹介され、堂々とした立ち振る舞いでインタビューを受ける桜乃から目を背けると、達巳はまた早足で都会の喧騒の中へと消えていった。



──────────────────────


【ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!!次章もよろしくお願いします!少しでも良いと思って頂けましたら、フォロー、☆レビュー、♡応援、よろしくお願いします!!励みになります!!】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る