傷を撫でる
ふとした時に浮かび上がる傷を
撫でたつもりがさらに深くしてしまい
何度も何度もその痛みを反芻しては
身動きできなくなってしまって
俺は立ち尽くすばかりで
泣き方もわからぬまま放心している
この場所にとどまっている暇などないのに
身体が言うことを聞いてくれない
これほどにも根の深い傷だとは
思いもしなかったものだ
どうしてか俺は泣けない代わりに
身体が硬直して使い物にならなくなった
その苦しみがお前にわかるか
きっとわからないのだろうな
いいやわかってもらわなくともいい
何ものにもかえ難いこの苦しみこそが
俺の深くした痛みであったことに
何ら違いはないのだから
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