対少女編Ⅰ
「それは確かな情報なのか?」
「確かだよ」
「・・・・」
「何をそんなに悩んでいるんだい?今の内容を聞いた普通の人間なら電話を放り出して彼女の元に向かうと思うけど。まあしょうがないか、だって普通の人間じゃないもんね」
その言葉で彼の目はさらに鋭くなった。
「お前はなぜ俺に情報を流す?」
「何を言ってるんだ、もう前にあった時に行ったことを忘れたのかい?・・・・僕が君を助ける理由、それは君が僕の兄だからだよ。これも前にも言ったと思うけど、まあ忘れてしまった事は仕方ない、とりあえず今は彼女を助けに行った方がいい。この僕でも時と場合によっては恐怖を覚えるほどの相手だ、もし奴と戦うような事があれば十分注意してよ、自分自身に」
透が聞き返す暇もなく電話は一方的に切られた。
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「うっ・・・・ここは、あ・・・・」
雪の肩に担がれた状態で永原は目を覚ました。
雪が歩くたびに伝わる振動で彼女の視界は揺れた。
特に何か特別なものが目に入るわけではない。ただ所々にできた水溜りとコンクリート剥き出しの硬く冷たい地面ぐらいだ。
「雪、私のことを下ろしてください。そもそもあなたは何故こんなことを!」
「・・・・」
彼女からの返事を聞くことは出来なかった。
「一体どこに向かっているんですか?それにここは?」
冷静にいつもの調子で尋ねてもやはり返答はない。
だがしばらく進むと彼女は美織を担いだままその場で止まった。
ドスッ
と、いう重々しく鈍い音がすると共に担がれていた美織の体は地面へと落とされていた。
「やっと来たか、待ち遠しくて頭がどうにかなるところだったよ」
薄暗い空間の奥から手を後ろで組、コツコツという足音と一緒に一人の男が現れた。
そして男が指を軽く鳴らすとさらに少し奥の場所に光がさして古びた手術台が照らされた。
「やだ・・・・やだ、もうあそこには・・・・戻りたくない・・・・」
初めて来たところのはずの光景に永原は恐怖を感じた。だが彼女の口から漏れた声は妙に冷静で、だが表立って表れてはいない恐怖心が伺える。
「あなたは・・・・」
その言葉に返すこともなく手術台の奥から歩いてきた男は魔法で体を動かすことができずに地面に置かれた彼女へと近づいた。
「来ないで・・・・ねえ、来ないで!」
静かなこの空間に彼女の叫びがこだまする。
「やめて、うっ」
「少し静かにしてくれ、暴れられると面倒だ」
男は彼女の顔に手を当てて魔法を使用した。
永原は眠るようにして静かにその場によこたわった。
「お前も今は眠れ、こちらを済ませた後にお前の方を調べよう」
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