シュークリームって好き?
あれからずっと家に閉じこもっていたので彼女に声をかけた。
「出ておいで。遊ぼう。」
ここで語尾に「よ」と付けるのはいかにも書き言葉だ。そんなの普通口に出して言わない。「よ〜」って少し甘えた口調になるのはあるかもしれない。
いや、そんなことはどうでもいい。とにかく彼女に部屋から、家から出てきて欲しかったのでそう言ったのだ。
彼女は2階の自分の部屋の窓から少しだけ顔を覗かせたが出てこなかった。顔を覗かせたあと、窓枠に手を組んで、そこに顎を付けて少しニヤけてこちらを見下ろした。そこまでは進歩だ。もう一回言った。
「もういい加減でてきなよ。」
この時は「よ」を付けるのは違和感はない。ないほうが命令口調でむしろよくない気がする。
いやそんなことはどうでもいい。彼女はそのままだったので、
「おいしいシュークリームあるよ〜。」
といった。おっと、ここでは「よ」は付けないといけない。そして語尾は伸ばさないと不自然だ。なにせ美味しいシュークリームなんだから。誘っているんだから。
そんなことがあって数年経って、今は普通に彼女は外を出歩いている。きっと僕のおかげだ。あの時のシュークリームが効いたのだ。そんなことを言うと、
「別にシュークリーム好きじゃなかったし。それにあまり美味しくなかったし。」
なんて言う。少しニヤリとして。そこは変わってないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます