シュークリームって好き?

あれからずっと家に閉じこもっていたので彼女に声をかけた。

「出ておいで。遊ぼう。」

ここで語尾に「よ」と付けるのはいかにも書き言葉だ。そんなの普通口に出して言わない。「よ〜」って少し甘えた口調になるのはあるかもしれない。

いや、そんなことはどうでもいい。とにかく彼女に部屋から、家から出てきて欲しかったのでそう言ったのだ。

彼女は2階の自分の部屋の窓から少しだけ顔を覗かせたが出てこなかった。顔を覗かせたあと、窓枠に手を組んで、そこに顎を付けて少しニヤけてこちらを見下ろした。そこまでは進歩だ。もう一回言った。

「もういい加減でてきなよ。」

この時は「よ」を付けるのは違和感はない。ないほうが命令口調でむしろよくない気がする。

いやそんなことはどうでもいい。彼女はそのままだったので、

「おいしいシュークリームあるよ〜。」

といった。おっと、ここでは「よ」は付けないといけない。そして語尾は伸ばさないと不自然だ。なにせ美味しいシュークリームなんだから。誘っているんだから。


そんなことがあって数年経って、今は普通に彼女は外を出歩いている。きっと僕のおかげだ。あの時のシュークリームが効いたのだ。そんなことを言うと、

「別にシュークリーム好きじゃなかったし。それにあまり美味しくなかったし。」

なんて言う。少しニヤリとして。そこは変わってないな。

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