第61話

61


 毎日欠かさずニュースを見ていた百子は

武漢から出たウイ○ス騒動を受け、瞬時に動いた。


 離婚届けは百子が決めた時に出していいことになっていた。

 年明け6日に離婚届けを役所に一人で出しに行った。


 夫であった伸之に婚外子などなく、離婚を突き付けられていなければ、

これまでノータッチだった伸之の仕事に関与し、先でどのようなリスクが

あるか、きっと自分は告げただろうと思う。



 というのも、この時百子は会社の存続の危機をいち早く危惧していたからだ。


 伸之はすでに5年前から家を出ていていない。


 伸之は果たして……今の騒動の始まりがどれだけすごい波で会社の事業に

襲い掛かってくるのかということに、気付いているだろうか。


 そのように百子が危惧しているうちにも、すでに日本でも横浜港を出港したクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の船内で恐るべき危機に見舞われる

ことになるのだった。


 クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の乗客で1月25日に香港で下船した80代男性がCO○○D―19に罹患していることが2月1日に確認されたからだ。


          ◇ ◇ ◇ ◇


その後、百子の危惧していたことが国内外経済全般で起こり始め、主力は高級時計・ジュエリーそしてその他にはアパレル・バッグなどを取り扱っている

伸之が父親から継いだ石田貴金属(株)もまた例外ではなく、船で例えるなら大海原でゆらゆらと揺られ続けていた。




 中国景気の減速に伴い、輸出の悪化。


 スマートホンの台頭やコロナ禍により伸之の会社でも遅まきながら

他社より一歩遅れて通販に切り替えるという策を取るのだが、業績は

思うほど伸びず芳しくなかった。



 伸之の取り扱っている物販の主力商品が腕時計やジュエリーという高額品で実物を直に手に取り触ってみる、あるいは試着してみる、その上で購入を

決めたいというニーズが他の商品よりも高い傾向にある為、遅れて通販に

乗り出したという経緯があった。

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