第31話

31


「子供たちには聞かせられない話、ということ?」


「うん、まぁそうだな」


「へぇ~、なんだろう。楽しみ~」


「……」



 私の言葉を受けた夫は何ともいえない表情に苦みを潰したような表情を

付け加えることを忘れなかった。



 朝の出掛けの話で「じゃあ、いってくる」と言い置き、いつものように夫は出掛けて行った。



 私は三和土に繋がる廊下からリビングに戻り、椅子に座った。



 今まで夫が何も言って来なかったからただの浮気で済ますのかと

思っていたけど、いいように取り過ぎだったな、やっぱり。



 だってあの日あの時、視てくれた霊能者の垣内さんに言われてたじゃない。




「結婚後、あなたの子育てが一旦落ち着いた頃、別に女の人ができます。

 ただの浮気で終わりそうにも思えるけれど、何か突発的な事象と重なってしまうとあなたとの縁を切るかもしれません」って。



 そうだよね、何か特別なことが起きたとしか考えられないわねー。


 だって私たち喧嘩もしたことないのだし、夫から何か不満を

言われたこともない。



 世間一般から見て、仲良し夫婦に見えるはずだし実際仲は悪くない。


 夫が浮気と認識していたのなら、相手の妊娠が一番色濃いような気がするけれど、まさかね。


 まだ相手との結婚も決めてなうちからあの伸之さんが妊娠させるとは

考えにくい。



 とにかくこの件に関しては結婚前から修羅場になった時のことは

シュミレ―ションしてるから、落ち着くのが肝要。



『かかってこいやー、不倫カップル。私は一筋縄じゃいかないよ』



 粋がる私の言霊がリビングに波打ち、そして消えていく。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る