一日何編も『すぐ桜は散りました。今度は私が散りましょう』3分の2

朶骸なくす

第一話・ゆれる心

 はぁ、今日は寒い。

 手の先は赤く、白い息に頬は痛い、鼻先はつん、とする。

 もう冬は終わったのに、また冬は来た。

 天気予報はあてにならず、みな朝起きて窓を開け空の機嫌を伺うのが毎日の日課になった。

 鞄に小さい傘は当たり前。ある人は合羽を持ってたりする。

 びっくりするほど寒い日に、何も着けないのは、午後になったら晴天となり暑くなる可能性があるからだ。

 だから私はマフラーさえしていない。

 賭けだ。

 でも、寒いのは嫌いではない。どんなに手先や足先が痛かろうとも『静か』

 今日は小学生たちの声が聞こえない。

 車は氷で滑らないよう慎重に運転されている。

 歩く人は、みな同じ顔をしながら一日を迎えていた。

 私も、その一人だ。

 行く手に砂利道が現れて「ジッ」と音がする。

 とうとう心臓以外の音が私の中に入ってきた。もう寂しくないね。

 そんなことを考えながら一歩一歩あるいていく。

(さむいなあ)

(マフラー、もってくればよかったかな)

(せめて手袋でも)

(でも、晴れたら)

 はあ、今日は寒い。午後は晴れると信じてる。

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