第27話:オープンベータテスト終了間際
2004年6月25日。
正式サービス、スタート。
ただ、この正式サービスから、有料化。
オープンベータ時代は、無料接続だったんだけど、正式サービスからは、リアルマネーを支払っての、接続。
月額固定で、三か月契約すると、少し割引、みたいな感じで。
課金の手段はいくつかあったけど、ウチはNETCACHで行こうって感じに。
ただ、そんな有料化のアナウンスが事前にあったために。
正式サービスには参加(課金)せず、オープンベータで『引退』する人も、ちらほら。
ウチが知り合った面々はおおむね、課金して続けるみたいだったけど。
そんな、オープンベータ終了間際。
運営側も、引き留め策として、最後にイベントを用意。
モンスターを倒すとイベントアイテムがドロップ。
このイベントアイテムの種類を揃えると、豪華(?)アイテムと交換ができる、みたいな。
まぁ、ドロップするのは、『A』とか『B』とかの、文字。
その文字を揃えて、『ある単語』にすると、景品と交換できるって感じ。
文字にはレアと非レアがあり。
当然、レアのドロップ率は、超低く。
非レアの文字が、あまりまくり。
個人露天機能も使って、レア文字含めてを高額販売とかもやられてたりするけど。
文字がドロップする期間が終了して、景品交換の期間ももうすぐ終了、って時期。
余った文字があちこちに捨てられていた。
所有しているアイテムを捨てると、地面にドロップする。
地面だけでなく、壁とか、樹とかの
とある村の門の前にある大きな樹。
そこに、文字がペタペタと貼り付けられてた。
「文字だけじゃさみしいな……」
ってことで、他のアイテム……お金も含めて、色とりどりのアイテムを、ペタペタ、と。
「おお、なんかゲイジツ的なオブジェになってきたなぁ」
って感じで。
見ず知らずのヒトも参加して。
「そっち、もうちょっと緑が欲しいな」
「そっちは赤が足りないね」
とか、言いつつ。
ゲイジツ作品を作っていたらば。
そのアイテムを、拾うヤカラが現れた。
「おい、こら、拾うんじゃねぇ」
もくもくと拾う、ヤカラ氏。
「おらおらおらー」
ガタイのでっかい、オークさんが、吠える。
ウチも。
「止めないと、撃つよー」
って、威嚇のつもりで、風魔法を。
「うりゃぁ」
撃ってみた。
「ぎゃぁああああ」
え?
あれ?
ウチのしょぼい風魔法の一撃で、撃沈する、ヤカラ氏。
「えええええ?」
「あああああ?」
何が起こったか。
一瞬、わからなかったけど、ウチは。
門の前に立っていた衛兵さんに、ぶち転がされてしまった。
PK、プレーヤーキラー。
プレーヤーキャラクターにダメージを与えて、行動不能にすると、PKとなって。
「あああああ名前が真っ赤にぃいいいいい」
そう。
PKの証として、頭の上に表示される自分の名前(普段は白)が、真っ赤になってしまうのだぁああああ。いやぁああああああ。
『自分はPKです』って、看板を掲げて歩き回るようなモノ。
これを『漂白』するには……。
「モンスターを倒しまくるしかないね……」
「うぅ……仕方ない」
村の近くにあって、ウチがソロで狩りが出来る狩場へ。
「ちょっと行ってきます(泣)」
って、走りだそうとしたら。
「手伝うよ」
「うぉおおおおおっ」
さっきのオークさんと、それに、近くにいた人間の魔法使いさん(いずれも男の子)が。
一緒に来てくれると言うことで。
「ありがとー」
狩場に入って、ウチはモンスターを倒しまくる。
オークさんがモンスターを連れて来てくれて。
魔法使いさんがウチを回復してくれたり。
モンスターが落とすアイテムも一応拾うんだけど。
「え? 10個??」
通常は、1個しか落とさないアイテムが、10個とか。
どうやら、オークさんや魔法使いさんが、自分のアイテムを捨てて、ウチに拾わせてる感じ?
「今日で終わりだからね」
…………。
そっか。
引退組。
正式オープンで有料化の前に、引退する面々。
この二人組は、引退する方々、か。
「お、だいぶ薄くなってきたね。もう一息、がんばれー」
応援、支援、いろいろ受けて、どうにか。
「やーーーーっ!」
「おめでとー」
「うぉおーーーーーっ」
漂白、完了。
「ありがとうね」
「いやいや、最後に面白いネタにつきあえてよかったよ」
「うぉーーーーーっ」
オークさんは叫んでばかりか(笑)
「そうだ、どうせもう要らないから、これも」
しゃきーん。
目の前に捨てられる、武器。
どさっ。
防具。
など、など。
「いいの?」
「あぁ、そうだな……もし君が引退する時は、別の誰かに譲ってあげるといいよ」
うん。
「おっと、時間だな」
「うぉおおおおおっ」
「じゃぁ、な」
「うん……じゃぁ、ね」
またね、とは、言わない。言えない。
すぅ、っと、ログアウトして消えて行く、ふたり。
ひとり、残されて、目の前には、武器やら防具やら。
しばし、呆然と立ち尽くす。
いつまでも、そうしているわけにもいかず。
武器や防具を拾って。
装備してみる。
「剣と盾なんて、初めて持つわね……」
もっと。
もっと早くに、彼らに出会えていたら?
なんか、もっと、面白い事もあったかも?
なんて、思いつつ。
村へ。
気を取り直して、公式オープンに、向けてっ!
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