元最強の戦士と最強を目指す亜鬼の戦士

夜行行脚

第1話

葉が擦れ音鳴らす。地面に落ちた枝を踏み、音を立てる。剣を抱えた男が森をさまよう。


「こっちの地方に来るのが初めての弊害が出ちまったな」


 男は呆れてため息を吐く。枝葉をかき分けて前へ前へと歩みを進める。そんな男の耳に、爆発音が聞こえ、その音の元が気になり、男は音の元へと歩みを進める。


「ん?誰かが戦っている?」


 男が目にしたのは。頭部に2本の角、体格は小柄、の鬼娘が魔物と戦っている光景であった。男はすぐに息を殺し、気配を絶ち、鬼娘の戦闘を見届けた。


「凄いな。体格差がありながらも全くもって恐れない狂人の精神、体格に見合わぬ斧の柔軟な振り回し。かなりの手強の戦士だ」


 鬼娘は、斧を振るい。魔物を叩き潰す。男は魔物を倒した所を見届け、手助けの必要は無いと判断し、その場を去ろうとした。


「ぬぁ!その木陰からうちを見続けてるやつ。うちに何か用があるのか!?」


 隠れていた男を鬼娘は大声で引き止めた。男は自身の存在に気づいたことにとてつもなく驚いた、と同時に、このまま去ってはやましいことがあったと言っているようなもんだと思い、素直に手を挙げ、鬼娘の前に男は姿を現した。


「許可なく見ていたこと、大変申し訳ない。だが、やましい気持ちがあったわけでないんだ。君のその戦闘技能、その美しさに見惚れ見させて頂いていただけなんだ。本っ当に申し訳ない!」


「おじさん、強いな!!うん、うちには分かるぞ!おじさん、とっても強いな!!」


 攻め立てられると思って覚悟をしていたが、鬼娘のその言葉に男は驚いた。


「おじさんが強い?、アハハ。そう見えるのかい?そりゃー嬉しい見立てだね!」


「うちは、強い者には目がないからな!。おじさん、うちのことを見ていたこと、うちと戦ってくれるなら許してやろう!」


「なに?」


 鬼娘の言葉に男は驚愕した。確かにこのことについての詫びを考えていなかった訳では無い。だが、男はまさか戦ってくれ!、と言われるとは斜め上の返答だったため男はつい笑ってしまった。


「ぬぁ!?。うちは本気だぞ!!」


「ひひっ。すまないすまない!そんなことで許してくれると言うのならば、俺としてもありがたい話だ!」


「本当か!?本っ当にうちと戦ってくれるのか!?戦うフリして逃げるのはなしだぞ!!」


「戦士に二言は無い!。だが、勝利条件を決めてくれ、そうじゃなきゃ死ぬまでって話になっちまうからな!」


「お、おう!そうだな!。うーん、勝利条件か·····ぬぁ!この場合、どう言う勝利条件を言うんだ?」


「あ?あー、そうだなぁ、よくあるのは相手に一撃与えた方が勝ち、とか。武器を落とさせた方が勝ち、とかか?」


「ふん!。なら、一撃与えた方が勝ちを勝利条件としよう!いいな!?」


「ああ、それでいいなら構わない!」


 鬼娘は斧を構える。男は剣を構える。合図はなく、戦闘は鬼娘の攻撃から始まった。

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