それぞれの記憶に6 ステフ

 ステフとメグにも、その知らせは届いた。


 ふたりはステフの部屋で、モーリスに会う明日の予定について、ちょうど話していたところだった。フライトのチケットも予約済みだった。


 メグは、ステフの大きく見開いた目から、みるみる涙があふれ出すのをみた。

 ステフはうつむいて、首をふり、

「嘘だ…」弱々しいつぶやきがもれた。

 

 メグは何があったかを知った。

「メグ、ごめん。しばらくひとりにしてくれないかな」

 そう言って、彼はいつもリモートで仕事する部屋にこもり、ドアを閉めた。メグはひとり、寝室のベッドで眠れない夜を過ごした。


 翌朝、ステフは初めて会ったときと同じく薄い色のサングラスをかけていて、その日はずっと外すことがなかった。それ以外はいつも通りに見えたが、深い哀しみがにじみでているように、メグには思えた。


 予定を変更して早めるのかメグが聞くと、

「もう急いでも、ゆっくり行っても同じだから。予定通りで」

 そう、ステフは言った。

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