第4話
「この小人がモンスター? それとも子供?」
おれは倒れている腰に布を巻いた小人をみた。
『おそらく、ゴブリンですね。 これでも成人です』
「ゴブリン...... そんなゲームみたいなものまでいるの?」
『あなたが理解しやすいように、あなたの知識内から当てはまるよう翻訳をしているだけです』
「なるほど...... それで死んでる?」
『いえ、魔力が反応してますので生きてます。 ただかなりの怪我をおっています』
「ァ...... アウ、アウゥ......」
痛みで苦しんでいるようだ。
「ああほんとだ。 これも倒さないとダメなの?」
『これはモンスターの中でも、破壊の衝動はないようですね』
「どういうこと?」
『魔力...... 神の力にも正と負があります。 負の力が大きいものは破壊の衝動にかられ暴れるだけですが、正の力をもつものはある程度理性的になります』
「つまりはいいモンスターということ?」
『そういうことです』
「じゃあ、この怪我治せないかな」
『可能ですが、かなりの力を必要としますよ』
「しゃあない...... このままじゃかわいそうだ」
おれはゴブリンに歩みよると精霊ちゃんにいわれたように、魔力を流し込んだ。
「くっ...... 力を失う」
みるみるゴブリンの怪我がなおっていく。
「おお! 傷がなおる」
「ゥ...... アウ、ア...... アウ!」
ゴブリンは目が覚めると、後ろにとびのく。
「治ったならもう帰るか......」
「アウ?」
ゴブリンは自分の体をみている。
おれはゆっくりと離れようとする。
「アウ!!」
「うおっ! なに!?」
ゴブリンがおれの服の袖を引っ張っている。
「なんだ? 治ったなら帰んなよ」
「アウ! ウ!! ウウ!」
『なにかを訴えているようですね』
「怪我と関係あるのかな? しかたない」
袖を持って離してくれないのでしょうがなく、ゴブリンが引っ張る方へとむかった。
「はやいって! どこまでいくんだ?」
ゴブリンに引っ張られ森を進む。
「あっ!!」
そこには小さな集落らしきものがある。
「ウオウ!」
ゴブリンが焦ったように駆け出し、中へとはいっていった。
「ん? なんかにおうな...... これ血のにおいか!」
おれは急いで集落に入る。
そこは細くて長い藁のようなものを束ねた粗末な家が立ち並ぶ。
そこかしこに血痕があり、集落の中央につづく。
「ウオウ!」
そこにさっきのゴブリンが呼び掛けるように、倒れたものに必死に呼び掛けているが、うなだれた。
そこには血を流したゴブリンが倒れていた。
「ひどいな...... しかたない」
近づいてみる。
『この個体は死んでいるようです』
「生きてるものを探してくれないか」
『あっちに複数生きているものがいます。 しかし魔力が弱っています』
おれはそっちのほうにいった。 そこには複数のゴブリンがうめいていた。
「よし! 生きてる! 助けよう!」
『しかし、この人数は......』
「しかたない!」
おれは手当たり次第に治療を試みる。
(くっ...... きつい。 頭がくらくらする...... なんとか一人でも......)
「はっ!」
見慣れない場所にいた。 そこは地面に布をしいただけの小さな家のようだった。
「おお! 起きられましたか!」
そうさっきのゴブリンより少し大きなゴブリンがそういって家にはいってきた。
(話せるゴブリン......)
「おれは...... そうだ! ゴブリンたちは!」
「......あなたが治療を施したものたちは、私を含めなんとか一命を取り留めました。 本当にありがとうございました」
そう大きなゴブリンは地面に平伏した。
「い、いや、いいよ。 無事だったのなら」
(でもこのゴブリン話ができる)
『これはホブゴブリンですね。 ゴブリンの上位種、モンスターの中でも魔力が高いものは知能も高いのです』
(そうか......)
「まあ、それならおれはこれで......」
「しばしおまちを!!」
再びホブゴブリンは頭を地面につける。
(こ、これは、嫌な予感がする)
「わたしはサクト、このゴブリンのサクト族の族長をしております。 我らにお力をお貸しくださいませんか!」
「いや、でも戦うのは無理だよ。 おれ戦ったことほとんどないし、自慢じゃないけど弱いよ」
「いえ、我らを安全な場所までつれていっていただきたいのです」
そういうと、サクトは事情を話し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます