第3話 泣かないで

「心配ないよ。大丈夫」

 怖い夢を見た。なんだったか覚えていないけれど、怖い夢だった。

 目からぽろぽろと涙がこぼれる。わたしはもう8才のお姉さんなのに、赤ちゃんみたいにわんわん泣いてる。

「大丈夫、パパがそばにいるよ。泣かないで」

 子守歌みたいな優しい声が、頭をなでる手と一緒に全身をやさしく包んでくれる。ベッドに腰かけたパパにぎゅっと抱き着いていると落ち着いてくる。

「一緒に寝ようか」

「わたしはもうお姉さんだから、親とはいっしょには寝ないの」

「じゃあ今日だけ、パパは君の弟になろうかな」

「弟なら一緒に寝てあげてもいい」

 素直に一緒に寝てって言えないわたしのとなりで、パパは笑って布団をかけてくれた。

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