不幸体質の没落令嬢、禁忌の剣《デスソード》でダンジョン配信をはじめます ~迷惑チューバーのドローンを壊してしまいました。しっかり配信されており、バズることに~
高瀬ユキカズ
第1話 不幸体質の令嬢
友だちだと思っていた女の子は、私の前でぼろぼろと涙を流している。
大学でできた初めての友だちだった。
「あんたのせいで彼氏と別れることになったんだからね!」
激しい声で泣きわめく。私がいかに悪いのか、私がどう原因となったのか、なぜ私のせいで別れることになったのか、罵詈雑言とともに次々と並べ立てた。
私はただただ戸惑うことしかできない。
「私が悪いの? 何もしていないのに……」
なんとか
彼女はさらにヒートアップしていき、顔を真赤にしていた。
「あんたの周りは不幸になる! みんな言ってたよ!!」
ほかにも威圧するような怒鳴り声や悪口をこちらにぶつけ、そのまま去っていく。
私はそのうしろ姿を無言でみつめることしかできなかった。
これで何度目だろう。
こんなことはしょっちゅうだった。
あの子の彼氏とは数えるほどしか話をしたことがない。それなのに先日、突然の告白を受けた。もちろん、交際することもなく丁重にお断りをしていた。
私は深くため息をつく。
「はあ……。やっぱり、私の周囲はみんなが不幸になっていく……」
私は、神宮寺財閥の会長である神宮寺源造の孫娘として生まれ、何不自由なく暮らしてきた。一族は巨額の資産を形成し、私もかなりの資産を持っていた。お金はありあまるほどにあった。
ところが人間関係だけは違っていた。
大学へ進学し、2回生となった19歳。
いまだに
どうしたら友だちができるのでしょう? どうしたら、ずっと友だちを続けられるのでしょう? どうしたら問題のない人間関係が築けるのでしょう?
そんな私がなにを血迷ったのか、ダンジョン配信をしたら友だちが作れるかもしれないと思ってしまった。
5年前。
突如、地球上のあちこちにダンジョンが出現した。
ダンジョンには地球には存在しないモンスターが生息している。人類をはるかに超える力を持ち、魔法を操りながら襲ってくる。モンスターは人類を脅かす存在だった。
各国の政府はダンジョン組合を設立して対策に乗り出した。国を上げてダンジョンの攻略を後押しし、その攻略の動画を投稿したものがダンジョン配信だった。
「これだ! これしか、ありません!」
私は、ダンジョンチューブに投稿された動画を見ながら叫んでいた。
そして落札してしまったのだ。
禁忌の剣〈デスソード〉を。
◆ ◆ ◆
なぜか、友だちができても長く続かなかった。
原因はいろいろある。一番多いのは友だちの彼氏に関することだった。
自分ではいたって普通の容姿だと思っているのだけれど、おそらくこれまで出会ったほとんどの男子から好意を向けられている。
影ではこんな噂が立っている。『
ほかにも、こんなことがある。
原宿を歩くだけでスカウトを集め、修学旅行では鹿が全部私のところへ。募金を集めるボランティアで街頭に立つと、募金は私の箱にばかり集まる。
海外でカジノへ行った時は私だけがフィーバーしまくり、ビンゴゲームでも最初に揃うのは私。
いつしか、まわりからはこんなふうに思われていた。穂南は『まわりの男と金と運を全部もっていってしまう女』だと。
そんなこんなで、影でささやかれている私のあだ名は『不幸を呼び寄せる令嬢』『幸福を吸い取る女』『災厄をもたらす深窓のお嬢様』など。
私は周りを不幸にしてしまうのだ、と本気で信じ込んでいたところに、たまたま目にしたのがダンジョン配信だった。
装備品はネットでも売買されていた。
アイテムや装備品は高値で売買された。そしてダンジョン内での戦闘のほとんどはアイテムや装備品がサポートしてくれる。それらにより、人間離れした動きが可能になる。
なにより、高額の装備を使うことで、最初から強い状態で始めることができる。
ネットサーフィンをしていくと、とある
そこでは、怪しげに黒い
禁忌の剣〈デスソード〉
現在価格 17億円(入札1,248件 残り4時間)
なぜか私はその剣に惹かれ、気がつくと18億円で落札。支払い手続きを終え、翌日には自宅まで届けられた。その剣を大切に、クローゼットへとしまった。
◆ ◆ ◆
東京都、豊島区目白の自宅。
30部屋からなる家の自室から階段を降り、リビングへと向かった。
家族全員が揃っていた。お父様、お母様、そしてお兄様にお姉様。
その前では、お祖父様が家族に土下座をしていた。
神宮寺源造、
神宮寺財閥の会長である高齢のお祖父様が、正座をした状態で深く頭を下げている。
「すまん、破産することになった」
言われたことの意味がすぐにはわからなかった。
……
……
……はい? どういうこと……ですの……?
本当は理解してるはずなのに、私の脳は現実逃避していた。
やがて、言われたことの意味を受け入れるしかないことに気がついた。
「どういうことだ、父さん」
「そうですよ、いきなりすぎます」
「いったい何があったのですか」
家族は口々に詰問していくが、お祖父様はただただ平謝りしていた。
お祖父様は顔を上げ、私に向けて申し訳無さそうに口を開いた。
「穂南、お前も今日から一文無しになってしまう。本当に申し訳ない」
しばらく、呆然としてしまった。
威厳のあったお祖父様がやつれた顔をしていた。
私は膝を折り、お祖父様の腕を取る。
「おじいさま、顔をおあげになって……」
この屋敷で過ごす最後の夜が更けていく。空気は冷たく、固まってしまったかのようだった。遠くではカラスが鳴いていた。家族はまったく会話がなく、まるで誰かが亡くなったかのように闇に沈んでいた。こんなに現実感のない夜は初めてだった。
こうして私は一夜にして、没落することとなった。
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