第56話 悪役令嬢さん、容量もチートです

「あ、あの。よかったら、今日はうちの魔石を好きなだけ持って帰ってください!」


 帰ろうとした俺たちに向かって、アビスちゃんが意を決するように叫んだ。


「え? いいのか?」


 静寂を愛し、自らの縄張りを守りたいアビスちゃんにとって、それは迷惑じゃないだろうか?


「いいんです。そうしてくれた方が嬉しいです。皆さんの事は……好きですから」


 本当にアビスちゃんは完全に心を許してくれているらしい。

 それなら断るのも逆に悪いか。


「よし、それなら今日だけは遠慮なく魔石を貰っていくか!」


 魔石の取り放題。

 いわゆるフィーバータイムの始まりである!


「よし! みんなでアイテムボックスが満タンになるまで魔石を拾いまくるぞ!」


 今まではアビスちゃんを警戒していたせいで、中途半端でも撤退するしかなかったが、もうそんなことを心配する必要もなくなった。

 どんどん魔石を拾って、金に変えてしまおう。


「ちなみに俺のアイテムボックスは、50まで入るぜ!」


「マジか!」


 キラーの奴、すげえな!

 主人公並みじゃないか。

 何気にアイテムボックス係として、有能なのかもしれない。

 ますます勇者の価値が減ってしまう。

 いや、まあ価値なんて元々ないんだけど。


「アイテムボックスってなに?」


「ああ、そうか。ルビアは分からないよな。またオープンステータスと言ってだな……」


 ルビアにアイテムボックスの出現方法を教える。


「ふ~ん。1000って書いてるけど、これがあたしの容量ってこと?」


「せんんんんん!?」


 ルビアはアイテムボックスにおいてもチートでした。


「お、俺の株が……」


 せっかくの特技のはずのアイテム容量でも桁外れなチートを見せられてキラーは項垂れていた。

 ……哀れな奴。


 その後はひたすら魔石を採掘する俺たち。

 もはやアイテム容量は無限みたいなものだ。


「よし、そろそろ帰るか」


「はーい」


 大決戦の後で疲れているようで、全員が賛成だったみたいだ。

 というわけで、今日はお開きです。

 いや、本当に長い一日だったよな。

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