どうも、酒クズ女サムライです。~呪いの妖刀でTS美少女と化した俺、【酔剣】使いの酒クズ女配信者としてバズリまくる!?~

深海(フカウミ)

配信者デビュー編

【#1】酒クズ美少女、爆誕!

「あ〜あ、ついにこうなっちまったかぁ〜……」


 長年ニートとして過ごしていた俺ですが、本日ついに家を追い出されました。


 いつかこんな日が来るんじゃないかと思っていたが……実際その時が来るとあまりにもショックがデカすぎる!!


 こんな時は──!!


「酒うめぇ〜〜!!」


 やっぱり酒に逃げるに限る。そう、まごうなきクズである。


 そうやって親との手切れ金をビールに替えて、公園で一人ヤケ酒をあおっていた時──ポケットのスマホが震えた。


(ん? なんだ?)


【通知→"ティーシャchチャンネル"の配信が開始されました】


(!? ティーシャの配信だ!?)


 急いでチャンネルページに飛ぶ。


 すると、”彼女”の声が耳に響いてきた。あの天使のように透き通った声が。


『みんな、おはティシャ〜!! 今日はいよいよSランクの新宿ダンジョン地下50階にいくよ〜⭐︎』


 スマホの画面の中で、銀髪猫耳のシスターがカメラに手を振っていた。俺はビールをあおって一人呟く。


「はぁ〜。ティーシャ、今日もかわぇぇ〜……♡」


 彼女が俺の”し”──ティーシャ・クラリオンだ。


 キラキラと輝くミドルショートの銀髪に、彼女の象徴である可愛らしい猫耳。瞳は綺麗な青色。


 今日も黒いシスター衣装を着こなし、リスナーへ元気いっぱいに挨拶している。


 どこを見ても、全てが完璧すぎるくらい可愛い美少女である!!


 そんなティーシャはダンジョンと繋がっている異世界レム・グランから来た少女であり、今ではチャンネル登録者・500万人を抱えるトップクラスのダンジョン配信者だ。


"おはティシャ〜!!"

"ついにSランクに挑む時が来たか……応援スパチャ!!(5000円)"

”がんば~!! こっちも!!(20000円)”

”ま、ティーシャなら余裕っしょ!”


『うわぁ~、みんな応援ありがと~♡ 期待に応えるね!!』


 そっか。そういえば、前の配信で『Sランクダンジョンに挑む』って言ってたっけな。まさに順風満帆じゅんぷうまんぱんって感じだ。


(あぁ……俺もティーシャみたいにダンジョンで活躍できたらなぁ~──ん?)


 そんな時だった。公園の片隅に”異世界へと繋がる階段”を見つけたのは。


 俺は目をゴシゴシ擦り、酔っぱらって見た幻覚でない事を確認する。


(……あんなとこに『ダンジョンの入り口』あったのか?)

 

 知らなかった。


 こんなご近所に入り口があると知れれば、絶対にネットに情報が出回るはず。


 つまり、アレは誰も探索してない可能性が高いダンジョンってことで──お宝が眠っているかもしれない。


 だんだん心がウズウズしてきたが、俺は慌てて首を横に振った。


(……いや、よそう。しょせんは夢物語だ!!)


 以前もこんな感じで魔が差したことがあったけど、結局モンスターにボコボコにされて多額の治療費を請求されたんだよな。


 あれ以来、ダンジョンに挑むことはなくなった。


(やめようやめよう、どうせ俺に才能なんてないんだから……)


 そうやっていつものように諦めようとした。だけど──やっぱり諦めきれない自分もいた。


 行くか行かないのか。一人で葛藤かっとうすること数秒……俺はビールを一口飲んで結論を出した。


(……こうなったら、ワンチャンかけるかぁ!!)


 どーせ行く場所なんてない。だったら、命がけのギャンブルでもやってやるさ!


 そんな酒の勢いもあって、俺は数年ぶりにダンジョンに突入した。


◇◆◇◆◇


(うぉ……なんかドキドキするな)


 中に入ると、両側を松明たいまつに照らされたダンジョンが広がっていた。


 このダンジョンの構造は至ってシンプルで、入り口からまっすぐ伸びた通路をひたすら歩いていく。この先にある何かを期待しながら。だが──。


(ありゃ、行き止まりだ……)


 なんだハズレか……。やっぱ世の中そう上手くはいかないよな──と思った瞬間。


 ゴゴゴゴゴ!!


「!?」


 おぉ、壁が開いた!! 


 なるほど。いわゆる”隠し通路”ってやつか。そして、その先に見えたものは──!!


(宝箱!? やったーーーーーー!?)


 石の祭壇の上に置かれた巨大な宝箱。


 それは棺桶のように横長な箱で、キラキラと光るオーラを纏っていた。明らかにすごそうな感じ!! これがビギナーズラックってやつか!?


 さっそく開けてみた。すると──。


「おお!? かっこいぃ〜〜!?」


 そこにあったのは、一本の刀。


 その鞘は漆黒の鈍い輝きを放ち、見ているだけでも惚れるような美しさだった。


(日本刀とか一度持ってみたかったんだよなぁ~♪)


 やっぱり男たるものカッコいい武器は使ってみたくなるもの。


 ……そんな気楽な考えで、鞘から刀を抜いてみた。すると──。


「うおぉ!? まぶしっ!?」


 急に謎の光がーーーー!! うわぁあああああああああ……!!


 ────。

 ───。


(うっ……)


 気が付けば、俺はダンジョンの床に転がっていた。


 どうやら例の刀のせいで気絶していたらしいな。ったく、いきなりなんなんだ……。


「えっ!?」

 

 立ち上がって自分の身体を見下ろした時──俺は思わず声を上げてしまった。


「な、なにこれ……!?」


 俺はスマホのカメラを鏡代わりにして、を確認する。


 サラサラと流れるように揺れるロングヘアーの赤髪! 顔は綺麗に整った色白の小顔! 服はいつのまにか和風の着物になっていて、胸の辺りを触ってみると──!!


「お、おおおお……"おっぱい"ついてるぅ~!?」


 これは……まさか!? 俺はで一人叫んだ。


「俺、女になってるーーーーーーーーー!?」


 おいおい、これってこの刀のせいか……? お、落ち着け、こんな時は──。


「ステータス!」


 文字通り、ステータスを見る呪文。これは誰でも使える初歩呪文である。


《名前》天霧あまぎりアヤカ(♀) 《レベル》???


《クラス》サムライ《装備》妖刀・アマギリ


《スキル》【酔剣すいけん】→酔えば酔うほどパワーアップ!


     【はがね肝臓かんぞう】→酒を無限に飲む事ができる


「な、なんだこりゃ……?」


 なんか勝手に名前決まってるし!? レベル『???』ってなに!? つーか、この"妖刀"って……!?


 《装備》の項目に触れると、妖刀の詳細が明らかになった。


《妖刀・アマギリ》→呪われた装備。所有者の性別を女へと変えてしまう。


「なっ!? 元の身体に戻れない……だと!?」


 そんなの、そんなの──。


「最っっっっ高じゃねぇか……!!」


 俺は自分のおっぱいを誇らしげに張りながら宣言した。


「せっかくこんな美少女になったのに、誰がおっさんの身体に戻りたがるか〜〜!!」


 むしろ感謝してるぞ!! 妖刀の呪い、バンザーイ!!


 

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