第6話 逆襲は不意打ちに限る
生命花の根元で意識を取り戻したヒノメは頭上を仰ぎ見る。
残されたハナビラは四枚。余裕のある状況ではなくなってきたのに対し、カレギ班のハナビラは七枚から一枚も減らせていない。
「けっこう芳しくない状況になってきたね」
ヒノメは隣で再生したムイに話しかける。ムイは映像花を見上げ、ミズクの現状を把握しようとしているらしい。だが、映像花に映し出されているのはカレギ班だった。
ゼンナの爆撃によってオトノの甲冑にも微細な損傷が生じている。ゼンナが外套から射出した白い種子の爆発によりハナビラが散布され、オトノの甲冑が修復される様子が映っていた。
「カレギさんたちは強くてつけ入る隙が無いよ。どうするの」
「百花繚乱が使えれば、逆転もできるんだけど……。とにかくミズクちゃんと合流しよ」
首肯したムイを伴ってヒノメは走り出した。
『着々とヒノメ班陣地へ歩を進めるカレギ班。すでに
ヒノメとムイが走って間もなく、オトノの甲冑が陽光を弾いて煌めく光が視野に映る。紫の光が四方に飛び交っているのは、ミズクが戦ってくれているのだ。
ヒノメは足を急がせつつ口早にムイと言葉を交わす。
「ムイちゃんはこのままミズクちゃんを助けに行って」
「はぁはぁ、ヒノメ、さんは……?」
「あいつらを後ろから不意打ちして刀の錆にしちゃる!」
「ヒノメさん、顔が怖いよ」
目が据わって口元を歪めているヒノメから顔を逸らし、ムイはまっすぐ進んでいった。ムイと別れたヒノメは大きな岩を迂回し、ミズクが気を引いている隙にカレギ班の後背を目指す。
戦いの様子は見えないものの、岩を挟んで音は聞こえてきた。ときおりカレギの怒号を爆音が掻き消すが、その後も音が止まないのはムイとミズクが撃破されずに抵抗しているらしい。
ヒノメは走って岩陰を遠回りして反対側に出た。岩から顔を覗かせると、間近にカレギとゼンナの後ろ姿、その奥にムイとミズクとオトノが入り乱れている姿が見えた。
陽光が反射しないように長刀を背後に回し、ヒノメはもっとも近くにいるゼンナへと忍び寄る。爆撃の
間合いに踏み込んだヒノメは即座に長刀を振り上げる。そのときになって、離れた位置にいたカレギがヒノメを知覚したが、制止するには遅すぎた。
カレギの異変を察したゼンナが振り向いたとき、鋭い斬り下げがその胸を両断した。傷口から紅色のハナビラが舞い上がり、ゼンナがたたらを踏んで後退する。
「て、てめー、ヒノメぇ……!」
踏み込んだヒノメが刃先に水平の軌跡を描かせた。一撃はその軌道上に位置したゼンナの頸部を切断、切り離された頭部と胴体が末端からハナビラとなって崩壊していった。
『あぁーっと! ヒノメちゃんの不意打ちによってゼンナちゃんが
「何よッ! 不意打ちを強調すんなー、おクロー!」
実況席に怒声を飛ばすヒノメだが、すぐに気を取り直してカレギへと爪先を向けて疾駆。迎え撃つカレギのツタが空を走り、ヒノメの頭部へと伸びる。瞬時にヒノメは身を沈めつつ左回りに回転し、直撃の瞬間にツタの一撃をいなしていた。
ヒノメは刃を返して回転の勢いを乗せた斬り上げを放つ。カレギが前面に伸ばして盾代わりにしたツタも断ち切り、切っ先はカレギの鼻先を掠めた。
さすがに顔色を変えたカレギが逃げようと身を翻す。その背へとヒノメが追い打ちの一刀を見舞おうと、長刀を振り上げた。
「させませーん!」
その叫びとともにオトノが突進で割って入る。ヒノメが構わずに放った斬撃がオトノの肩口に当たり、悔恨の火花を散らした。
『惜しいところでオトノちゃんの救援が間に合った! 痛恨の一撃は不発に終わり、ヒノメちゃんが後退! いや、反撃に転じたカレギちゃんのツタがその手首と両足を絡めとったぁ!』
伸ばされたツタがヒノメの両手足に巻きつき、その肉体を地面と平行にして宙に浮かせる。カレギが勢いをつけてツタを引き抜き、高速回転したヒノメが地面に激突した。
「ヒノメさぁん、大丈夫ー⁉」
ムイとミズクが駆けつけてヒノメを助け起こす。
「ありがと。どうにか一人少ない間に数を減らしておきたいとこなんだけど」
立ち上がったヒノメが長刀を構え直す。カレギは嗜虐の笑みで応じた。
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