第3話 試合開始と接敵
『さぁ、これより第二試合、〈花散らし戦〉の開幕です!』
クロワによる試合開始宣言。
「行こう。ムイちゃん、ミズクちゃん」
「はいー。でも、今回はどう戦うの?」
「私たちの能力だと、大通りで相手を待ち構えるしかないよ」
「いつも通りということですね。遮蔽物があるとミズの射撃が遮られますし、ヒノメの長刀も狭い場所だと振れません。イチバ班も同じです」
「じゃあ、ムイちゃん先頭で行こう」
ヒノメたちは大通りに出るため、住宅街のなかを歩いていく。ほんの三分ほど歩けば大通りに辿り着く距離だ。
『両班とも、まずは移動開始。接敵まで時間があるため、ここで〈花散らし戦〉のルール説明を実況から行わせていただきまぁーす!』
慣れた様子でクロワが説明を始める。
『えー、〈花散らし戦〉の勝利条件は簡単。相手の
淀みなくクロワが続ける。
『ハナビラ一枚につき一人再生でき、ハナビラは班員で共有します。つまり、
ルール説明を終えるとヒノメ班の残機が十二機、イチバ班は九機であることを説明し、クロワは鮮やかに場を繋いでいた。
『そろそろ試合にも動きがある頃です。みなさまお見逃しなきよう!』
ちょうどヒノメたちが大通りの手前まで来たとき、観客の意識を戦場に向けてクロワは小休止に入ったようだ。
「こっからは注意していこう。ムイちゃん」
緊張した面持ちでムイが頷いた。ムイを先頭にヒノメが続き、最後尾にミズクが並んで大通りへと歩み出す。すぐ反応できるようにムイは両腕を左右に広げ、慎重に石畳を踏んでいく。
「気を付けて。イチバたちは先に来て、私たちを狙っているかもしれない」
「それを探るのがヒノメの役割のはずです」
「わ、分かってるって」
ミズクの冷淡な一言に鼻白んだヒノメは長刀を掲げた。
加護の特性によって花守の能力は六つの種別に分類される。一人で複数の種別を有するのが普通であり、ヒノメは
ヒノメは長刀を逆手に持ち替えると、その切っ先を地に突き立てる。
ぴちょおおぉぉん……。
水面に石を投げ入れたような音が鳴り、ヒノメを中心にして空間が波紋となって揺らめく。その揺らめきは放射状に広がっていき、大通りだけでなく周囲の建物までも包んでいった。
ぴちょん。
微かな水滴の音を聴覚が拾う。その瞬間、ヒノメは叫んでいた。
「いた!
顔を引きつらせてムイが右を向く。そこへ二階建ての屋上から飛び降りたイチバが槍を引っ提げ、
「ひえぇぇえ!」
ムイが両手を広げ、半透明に光る防壁を前方に展開。その瞬間、青い防壁と槍の穂先が激突して白熱の火花を散らした。
『両班が激突! 戦況を静から動へと瞬時に転調させたのはイチバちゃん! イチバ・クジ・〈
火花の余光がその面を白く染め、クロワの声を背景音にしたイチバが不敵に微笑む。
「ヒノメさぁん!」
「任せて!」
ヒノメは防壁から躍り出て踏み込みざまに斬り下げる。イチバは後退しながら槍を横にして一撃を防御。続けてヒノメが斬撃を放ったとき、イチバは槍を小振りにして長刀を弾いた。
イチバが後ろに跳び退って距離を取る。追撃をしかける隙を見出せなかったヒノメは、体勢を整えつつその姿を見送った。
ヒノメとイチバが睨み合い、その頭上にクロワの熱を帯びた声が降り注ぐ。
『イチバちゃんに対するは、長刀の名手であるヒノメちゃん。ヒノメ・ツチトイ・〈
ショートパンツに袖の無い上衣と動きやすそうな衣装のイチバだが、その全身には異様な赤い文様が刻まれている。
イチバがヒノメと対峙する隙を突き、ミズクが攻勢をかけた。
「食らえ、です」
イチバへ向けて、浮遊した六冊の本が紫の光条を連射。回避する余裕のないイチバは短槍を垂直に立てるが、それで防ぎきることはできない。
イチバの全身に紫の光が次々と突き立つ。身体から白煙を上げるイチバは痛痒を感じた様子もなく、槍を構え続けていた。
「イッタイけど効かない、効かなーい」
「クッソー、です」
「私が!」
ミズクの射撃が止むと同時にヒノメが踏み込んだ。それまでの威勢に反してイチバが逃げるように後退し、思わずヒノメは追いかける。
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