第2話

食材や運営方針に行を割く為、経緯は省こう。

ともあれ僕は店をオープンした。

パスタとピッツァ、ワッフルにコーヒー。

完全無添加・無化調、手作り。食材は原材料や製造方法から選ぶ。避けがたいものを避け、得難いものを得る。そんな店に。

パスタは乾麺が良かったけど特殊な製法の生パスタを選び、ピッツァは信州の地粉から始めてやはり重くてカプートの00粉。素晴らしい粉だったのでその後それでカヴァテッリやニョッキとショートパスタを自作した。

ワッフルは僕は甘いものが苦手なので奥さんに作ってもらった。近くの低温殺菌乳を使って牛乳プリンやカフェオレプリン、ティラミスも作ってもらった。

料理はパルマプロシュートとパルミジャーノ・レッジャーノ、キハダマグロのタタキに信州黄金しゃも。

パスタのレシピは当初から20以上はあった。

秋には天然きのこ、春には山菜、夏には高原野菜を散りばめた。

パスタに使うベーコンは無塩せきを探した。

当時から食材の目利きに特化しており、調理技術や盛り付けは苦手だった。

食材費は高くついたが、そのぶん宣伝広告費を0、人件費も0、パスタもピッツァも800円で出した。原価割れしていた。

すべてはお客様の為。

しかしそのお客様は、来なかった。

それに、来てくれても出せば出す程赤字になった。

馬鹿だった。今も馬鹿だけど。

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