物書暇乞。
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第1話 物語で味わう感情の深度の話
仮に、自分と同じような経験をした登場人物が描かれた小説に出会い、それを読み切ったとして。
その登場人物が経験を通して味わった感情の深度が、自分の味わった感情の深度と比べて到底埋めがたい誤差があった時。
同じ痛みを分かち合えるかもしれないという期待が増長させた、哀しみを伴う苦痛は、名状しがたいものがある。
決して同じ経験でも、同じ人間でもないのに。
ただの創作物なのに。
けれど、ただの創作物だからこそ。
それを逃げ口上として物語に目を逸らされたときのやりきれなさは、筆舌に尽くしがたい。
決して同じ想いを共有してくれなくてもいい。
そんな支配的な期待をしたりはしない。
ただ、生身の感情から逃げるような、嘘で真実から目を逸らすような、
実感という血液を抜かれた、切実さの伴わない感情の深度に。
どうしようもなく、ここにある痛みに触れてくれる手は無いという孤絶と、
ならば自分が書こう、という激情が産声を上げるだけだ。
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