第3話:夢の二時間。

僕が酔っ払って間違ってレンタルメイドさんのサイトでポチッとしたため

代行サービス・ユートピアってところから「瑠衣るいちゃん」ってメイドさんが訪ねて来た。


酒に酔っててなんにも覚えてないくせに僕はちゃっかり自分のタイプの子を

選んでるのはさすがだよ。


覚えてないからいいですって言い訳できないし、せっかく来た瑠衣ちゃんを

追い返すなんて可哀想だし、もったいないからレンタルすることにした。


二時間15,000円で・・・。


で、貴重な二時間を有効に使わないと・・・。

だから最初はどうしても彼女のことが知りたいよね。


瑠衣るいちゃんは?・・・学生さん?それとも社会人?って言うか

何歳?」


「ごめんなさいプライベートなことは・・・」


「あ〜そうなんだ・・・だよね?」

「じゃ〜なにか趣味とか?」


「ごめんなさいプライベートなことは・・・」


少しくらい教えてくれたっていいじゃないかよ、これじゃなにも分かんないよ。

レンタルしたって意味なくなるだろ?・・・。


「福ちゃんは?社会人?どこかにお勤めとか?」


「え〜と僕は・・・都内の◯△大学に通ってて彼女いない歴5年目突入」

「持病なし・・・いたって健康・・・エッチの経験・・・」

「なに言ってんだ、僕」


「え?◯△大学?」


「そうだけど・・・どうしたの?」


「いえ、なんでもないです」


「僕なんてつまんないプロフィールだよ」

「で、酒に酔った勢いでレンタルメイドさんのサイトを覗いてたみたいだしね」

「よっぽど、彼女が欲しかったんだろうな・・・なんだかな〜」


「あの、私、趣味じゃないですけど、食べるの大好きです


「え?そうなんだ・・・じゃ〜今度、美味しいのもでも食べに行ってみます?」


「はい喜んで」


結局、そのあとはテレビなんか見て、たら〜っとした時間だけが通り過ぎていった。

二時間なんてほんとあっという間。

映画一本観たらおしまいだよ。


「お時間きましたから、そろそろ私帰りますね」


「もう?・・・あ、あの今日は楽しかったです」

「また来てもらってもいいですか?」


「え?また呼ぶんですか・・・」


「イヤなの?」


「私、これから忙しくなりそうですから・・・来れない時あるかもです」

「実はね私、福ちゃんが最初のメイドなの」


「え?僕がはじめて?」

「瑠衣ちゃん、メイドになったばかりなんだ」


「そうです・・・今のところは私のご主人様は福ちゃんだけですけど

そのうちご主人様が増えちゃうと忙しくなるでしょ?」


「ああ・・・そうか・・・そうだよね」


「でも私最初のご主人様が福ちゃんでよかったって思ってますよ」


「ああ、それは嬉しい。めちゃ嬉しい」

「建前だけの付き合いかもしれないけど・・・僕は楽しかったよ」

「僕も瑠衣ちゃんでよかった」

「あのさ・・・このシステムって専属ってできないの?」


「専属?」


「そう・・・呼ばなくても毎日定期的に時間が来たら来てもらえるとかって」


「いいですけど・・・だけど福ちゃん、そんなおバカなことしら、お金も

おバカになりませんよ・・・いつか破産しますよ・・・」


「そうか・・・タダじゃないんだった・・・めちゃ落ち込む」


「福ちゃん・・・私にいてほしいの?」


「君を好きになっちゃいけないんだろ?・・・タブーなんだよね?」

「こんな形でも、せっかく巡り会えたのに・・・時間が来たら君は帰っちゃう」

「君が帰っちゃうとひとりでいた時より余計寂しくなるよ・・・」


「そんなぁ・・・そんなこと言われると私も切なくなっちゃうじゃないですか?」

「もう福ちゃん・・・」


「これは特別ですからね」


そう言って瑠衣ちゃんは僕にハグしてくれた。

そんなことされたら、そのまま押し倒したい衝動にかられるじゃん。


「また来てあげますから・・・元気だして・・・ね」

「スマホの連絡先の交換はできませんから、会社に直接連絡くださっても

いいですし、ここに連絡してくださってもいいですから」


そしてタイムリミットが来て瑠衣ちゃんは僕に手を振って帰って行った。

僕はしばらくの間、放心状態だった・・・ずっと緊張してたから・・・。


瑠衣ちゃんがいるだけで部屋の空気が変わるな。

自分とは違うって意識と異性が横にいるってだけで僕の感情は揺さぶられる。

僕はすっかり瑠衣ちゃんの虜になってしまった。

でも彼女は言った。


あくまでレンタルメイドですからね、勘違いして本気にならないでくださいね

って・・・そうなったらご対応できなくなりますからねって。


僕と瑠衣ちゃんの間には大きな壁が立ちはだかってるんだ。


(もし僕が下心を見せたら彼女は来なくなるかもしれない)

(ここはじっと我慢して、彼女に来てもらうしかないのかな)

(瑠衣ちゃんは僕のことなんて客としてしか見ていないんだろうな)


僕にとってこの日の出来事はまるで夢のような出来事・・・だけどもう二度と

瑠衣ちゃんには会えない気がした。


(なんで酔っ払って彼女を呼んだりしたんだよ・・・もう気持ち戻せないじゃん)

人を好きになったら目の前の世界が変わってくる。

瑠衣ちゃんといる時は楽しいんだけど・・・帰っちゃうと切ない。

レンタルメイドなんて呼ぶんじゃなかった。


つづく。






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